オブシダンの刀

 半信半疑で、フェリシアは白い銃を見つめる。


「ホントに!? あたしが撃っても大したダメージにはならなかったわよ?」

「マギ・マンサーのスキルで調べて、わかりました。ゴッド・ノイズ最大の特徴は、『無限に魔力を送り込める』ことです」

「どういうこと?」

「威力も無限という意味です。膨大な魔力を込めれば」


 確信めいた力強い言葉で、サピィは告げた。


「たしかに、俺の銃は壊れてしまった」


 先の弔砲との戦いで、俺の銃は黒焦げになっている。

 もう、使い物にならない。修復したところでムダだろう。


「それは、あなたの魔力を想定していないからです。壊れても当然でしょう。コナツさんだって、あなたがそこまでレベルが上がっていたなんて知りません」


 魔法職ではないフェリシアに合わせて、調節していたのだ。壊れても仕方ないか。 


「しかし、その膨大な魔力は、どこにあるんだ?」


 俺たちが束になっても、アイツを破壊できるだけの魔力はかき集められない。


 もし、アレを止める魔力を求めるなら、それこそ魔王クラスの……。


「まさか?」

「ランバートのご想像したとおりです。わたしが、弾丸となりましょう」


 サピィ自らがゴッドノイズの弾丸となり、ヴァスキーを破壊するという。


「それでダメなら、あなたが使ったレアブレイクで。例のDディメンション。セイバーですか? あれでサクッと。それにしても、さらに威力が増していますね」

「ああ。それについてなんだが。サピィ、聞きたいことがある」


 俺は、例の敵ドラゴンからドロップした刀をサピィに見せた。


「なんですか……これは、オブシダン!?」


 刀を見て、サピィはフィーンド・ジュエルの種類をそう解説する。


「やはり、ヤバイ武器なのか?」

「オブシダンこと、黒曜石。フィーンド・ジュエルの中でも、群を抜いて激レアのジュエルです。しかも、武器のまま入手なんて、不可能に近いです。普通、こんなキレイな形でドロップしません」


 サピィの説明から、よほどのレアジュエルだと推測できた。


「効果は?」

「攻撃力を一五%、倍増します。また、刃がジュエルを吸収して、その力を得られます。サイズ関係なく」


 聞けば聞くほど、とんでもない武器であるとわかる。


「ただ、一度鍛冶で鍛えたほうがいいです。良質の柄があれば、さらに威力は増すかと」


 また、この刀は成長するという。

 多くのジュエルを食えば食うほど、より強くなるとか。


「ランバート、どうやらあなたは、ジュエルに関してだけはレアを引く素質があるようです」


 再び、作戦行動に移った。


「フェリシア、わたしはスライムとなって、あなたの銃の弾丸となりましょう」


 身体をスライムに変化させ、サピィがゴッドノイズの薬室に入り込んだ。


「こんな遠くからでいいの?」

「構いません。飛距離は関係ありませんので」


 ゴッドノイズの火力は、飛距離を問わないという。


「私は、引き金を引けばいいのね? あなたに被害はない?」

「ええ。ご安心を。この程度で死ぬ魔王ではありません」


 フェリシアが、ヴァスキーに照準を合わせる。


「ゼン、あなたもいいですね? アレを破壊してしまって」


 サピィが尋ねると、ヴァイパー族の少女ゼンはうなずいた。


『……悔しいが、やっちまってくれ。制御できないなら、持て余してしまう』

『オレたちは、あのバケモノに依存しすぎた。配下を殺すような殺戮マシーンになっちまったなら、一思いに』


 拳を握りしめながら、ゼンはヴァスキーを見上げる。


「でも、どうするんだ? めちゃめちゃ動きが早いぞ!」


 トウコが、ヴァスキーの動きを指摘した。


 のっそり動いているようで、ヴァスキーの挙動は戦車より早い。


『オレたちに任せろ!』

『取り憑いて、一瞬だけ止める!』


 ゼンが言うと、シーデーが再びバイクへと姿を変えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る