謎の武器型ジュエル
「ランバート!」
サモエドに乗って、トウコが駆けつけてくれた。俺に魔法を施す。
「すまんトウコ。他のハンターたちは?」
「あたしの手がなくても、善戦してるぞ。それより早く乗れ」
トウコが、サモエドに乗るように促す。
後ろに乗せてもらった。思っていた以上に、乗り心地がいい。
「いくぞ。揺れるけど危なくないからな」
「ああ。飛ばしてくれ」
もっとも火の手が上がっている、門の方まで走った。
「とりあえず、コレを食っとけ」
俺の手に、トウコが果実を手渡す。例のポーションフルーツだ。
「ありがとう、トウコ」
ちょうど水分が欲しかったので、ありがたい。
果実をかじると、瑞々しい甘みが口の中に広がった。
元はポーションなので、腹持ちは心もとない。
が、体力と魔力がみるみる回復していく。
さすがにジュエルでは、ここまでの回復速度が出ない。
腹に何かを溜めることの大事さを、改めて思い知った。
「ハンターたちは、無事らしいな」
サモエドから、ハンターたちの戦況を分析する。
俺の思っていた以上に、ヴァイパー族を抑え込めているようだ。
犠牲者も多いが、仕留めている数も多い。
「それよりランバート、それはなんだ?」
俺の持っている刀を、トウコが指差す。
「ジュエル、だよな?」
「らしい。アイツは、モンスターだったからな」
モンスターを俺が倒すと、【フィーンド・ジュエル】という魔力の塊を落とす。
「それにしてもなんだ、この黒いジュエルは? こんなものは、見たことがない」
回収しそこねた、イクリプスの残骸かと思った。
アレだけの爆風を受けたのだ。
跡形もなくなっていると思ったが。
「違う。イクリプスじゃない」
イクリプスは、黒い刀の隅に落ちていた。
ジュエルの力で、被害を逃れたらしい。
この刀は、異様に細く鋭かった。
刀身は、レイピアのように頼りない。
しかし、見た目に反して強靭であると感じ取れた。
「オニキスじゃね?」
「いや、オニキスは真っ黒だからな」
黒に、わずかながら青や紫が混じっている。
どんな効果のある、ジュエルなんだ?
一旦、コナツと相談に戻ることも考えた。
しかし、そんな時間はない。
こうしている間にも、サピィは戦っているのだ。
「おいアレ!」
ヴァイパー族の魔王、ヴァスキーの全貌が見えてきた。
「でかい。改めて見ると、壮大だな」
屋外で見ると、やはりその姿に圧倒される。
「ランバート、ヤバい。誰かが操縦席に!」
トウコが、ヴァスキーの頭部を指差す。
『我が野望のために、その身体をいただく!』
あれは、
背部のバックパックから、触腕を出している。
『ぎゃあああ!』
『うおおお!』
赤と青のヘビが、白目をむいて苦しんでいた。
能面は、あのヘビたちを無力化する気だろう。
「ヴァスキーを外からコントロールする気か! そうはさせん!」
フェリシアが能面を狙っていたが、手を出せない。
撃てば、ヴァスキーごと吹き飛ばしてしまうかもしれないからだろう。
「サピィ!?」
ヴァスキーの背部に、サピィの姿を捉える。
真下には、負傷したシーデーが。
「トウコ、後ろに回ってくれ。ヤツは、俺に任せろ!」
刀を構え、俺はトウコの前に出る。
「なにをする気だ?」
「この武器型ジュエルを、試す!」
俺は、刀状のジュエルを掴んだ。
「あの触腕を、切り裂いてやる! おらあああああ!」
トウコのサモエドが、ヴァスキーの身体を駆け上がる。
ヴァスキーも、サモエドの存在に気づいたらしい。
しかし、能面の対処に追われてこちらに対応できないようだ。
「ぬう、キサマは!?」
能面が、こちらを見下ろす。
「
触腕へ向けて、俺は刀を振り回した。
刀から、ありえない大きさの衝撃波が飛ぶ。なんだこれは。
濃藍の光刃が、波動でヴァスキーのウロコを剥がしながら能面へ突撃していく。
「ぬうおおおおおおお!?」
衝撃波は、能面の胴体ごと触腕を斬り裂いた。
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