能面の策略:サピィサイド
サピロスは、ヴァスキーを追ってなおも急ぐ。
なおも、ヴァイパー族の残党はサピロスたちを狙う。
「いい加減に、あきらめなさい!」
フェリシアのハンドキャノン、『
ヴァイパー族は、確実に数を減らしていた。
大型の銃器なのに、片手で撃っても安定した射撃ができるとは。
フェリシアのテクニックもすばらしいが、コナツの腕はすごい。
「だいぶいなくなったわね」
「はい。それに、もうすぐエルトリです」
夜の闇の中、エルトリの明かりが見えてきた。
ヴァスキーの背中も、目前である。
エルトリから、砲撃が飛んできた。相手も、ヴァスキーに気づいたのだ。
ロケット砲やミサイルが、ヴァスキーを止めねばと放出される。
「危ない! フェリシア!」
サピロスは、フェリシアの身体を屈ませた。
猛スピードで、ヴァスキーから離れる。
瞬間、ヴァスキーやその周辺に砲撃が着弾した。
ヴァスキーの動きが徐々に緩まっていき、やがて止まる。
巻き添えをくらわないように、サピロスたちはヴァスキーから少しずつ距離を取った。
砲撃は、とどまることなく続く。
ヴァスキーの周辺に、土煙が上がった。
取り付くことは、あきらめない。
どうにかこの攻撃をかいくぐって、ゼンを引っ張り出せないか。
だが、それは絶望に近いかもしれない。
あれだけの攻撃を受けて、ヴァスキーが無傷だったからだ。
再び、ヴァスキーが進軍する。
数台の戦車が、ヴァスキーの行く手を遮った。無数の砲撃を開始する。
しかし、一発も致命傷を与えられない。
ヴァスキーが、長いシッポを振り回す。
それだけで、戦車部隊が一瞬で壊滅した。
シッポの勢いは、止まらない。今度はサピロスたちのところに。
「いけない。シーデー、回避!」
「承知……うごっ!」
思いの外、早すぎる。回避が間に合わなかった。
シーデーの後輪に、シッポがかする。
「くううう!」
シーデーの車体が分解してしまう。
「無事ですかシーデーッ!?」
「心配ご無用! ドローンたちも無事です!」
ドローンたちが、破損したシーデーのボディを修復していく。
「あいつを撃ったら、ダメなのよね?」
フェリシアが、ハンドキャノンの照準をヴァスキーの背面に合わせる。
「今撃ったとしても、効果は薄いでしょう」
「ランバートは、無事でしょうか」
いくらその方が効率的とはいえ、彼を危険に晒したのは事実である。
「彼を信じましょうぞ。ランバートなら無事でしょう。それに、トウコ殿もおります。命を失う事態には」
「そうですね……!?」
ヴァスキーの上空に、小さな飛行船が飛ぶ。
飛行船は、身動きが取れないヴァスキーの頭上で止まった。
そこから、ダイブしてくる人影が。
「あれは、【能面】! ヒューコにいたのではなかったのですか!?」
χの首魁である【能面】が、姿を現す。
しかし、彼の目的は最初からヴァスキーだった。ここに来る方が自然か。
高架下状態から、能面はヴァスキーの脳天を突く。
「あの上に、コクピットが!」
ヴァスキーの頭上に、半球状の透明な障壁があった。
サピロスはガラス状の障壁内部に、ゼンの姿を捉える。
「ゼンを見つけました! 向かいます!」
彼女を押さえ込めば、きっとヴァスキーを無力化できるはずだ。
「お気をつけて!」
急がないと。
サピロスは、ヴァスキーの表面をよじ登っていく。
ガラスと思われたが、能面がいくら踏みつけても割れない。
おそらく、なんらかの魔力が込められているのだろう。
いまだ能面はコクピットを踏みつけて、半球状のバリアを破ろうとしていた。
『やはり外側から侵攻はムリか。ならば、内部から攻め込むとしよう』
能面のバックパックから、無数の触腕が伸びる。
触腕はヴァスキーの眼球に侵入した。
「ぎゃあああああ!」
「ぐおおおおおお!」
赤と青のヘビが、能面の電流に当てられる。
ヴァスキーの瞳から、光が急速に失われていく。
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