VS プロイセン、決着

「なんと。まだ勝てる気でいるのか?」

 

 指を鳴らしながら、プロイセンが不服そうな顔をする。


「その気がないなら、とっくに逃げているさ! いくぞ!」


 ソード・レイを構え直し、俺は突撃した。


「ならば死ね! 我が野望の礎となりてっ!」


 プロイセンも、迎え撃つ。明らかに、こちらを見下していた。

 おそらく今のヤツには、ヴァスキーと融合した自分の姿しか映っていない。


 だからこそ、うまくいく。最後の最後で欲が出たな。そのスキを突く。 


 俺には、デーニッツほどの腕力もない。

 このバケモノに勝つ手立ても、一切なかった。

 まさに、ノープランである。


 しかし、逃げてばかりもいられない。

 俺は、前を任されているんだ。

 フィーンド・ジュエルの装備を信じる。


「おらああ!」


 インファイトで、攻め込んだ。

 ソード・レイが通用しなくても、俺にはまだ「イクリプス」がある。

 黒い物理剣が。


「無謀だな。もっとクレバーかと思ったぞ」

「無茶かどうか、試してみるんだな!」


 剣では、敵いそうにない。

 Dセイバーすら弾くのだ。

「剣」なら勝ち目はない……。


「ゼロ距離で斬りかかる気か。愚かな。我がブレスを文字通り弔砲ちょうほうとし、息絶えるがよい!」


 プロイセンが、大口を開けた。


「おらああああ!」


 大きく開いた口に、俺はイクリプスを押し込む。


「ごおおおお!?」


 ノドを一気に刺し貫かれ、プロイセンはブレスを吐き出せない。

 だが、まだ息がある。


「恐れを知らぬ男だ。しかし、万策は尽きた。オレはまだ生きている! サイボーグ化したおレには、致命傷などない!」


 プロイセンが、俺のノドに手をかけた。

 俺の身体を、高々と持ち上げる。


「それはどうかな?」


 首を絞められた状態のまま、俺はハンドキャノンをプロイセンの口の中へ突っ込む。


 実体剣で攻撃したのは、とどめを刺すためではなかった。

 真の目的は、口を開いたままにさせるため。


「ぬう!?」


 ハンドキャノンを構える俺を見て、プロイセンはようやく気づいたようだ。

 まさか、魔法使いが銃を構えるなどと、思っていなかったのだろう。


 俺がビルを破壊していたとき、プロイセンはその場にいなかったのだ。

 余裕綽々なヤツの表情が物語っている。


「オレに魔力銃が効くと思っているのか? いや、キサマのことだ。何か策があるな!?」


 プロイセンは口を閉じようとした。だが、もう遅い。


「くたばれ、おらあああ!」


 俺は、銃の引き金を引いた。


 ブレスをも圧倒する魔力砲が、ハンドキャノンから放たれる。

 フェリシアが「福音」を手に入れたので、俺が譲ってもらったのである。

 もちろん、コナツに特製で作ってもらった、フィード・ジュエルを自重しない作りだ。


 極大の魔力波が、プロイセンを体内から焼き尽くす。

 ブレスを吐く直前だったため、誘爆しているのだ。


 無属性であるから、内側から冷却してもムダである。


 さらに、俺は全魔力を放出していた。

 自分で止めたくても止められない。

 だが、ここで止めると反撃される。


「ぎょわああああああっ!?」


 体内に魔力の砲撃を受けて、プロイセンの肉体が爆発とともに溶解した。


「バカな!? ドラゴンのオレが、こんな死に方……ごおおおおおお!」


 ドラゴンの皮膚さえ突き破り、魔力が大爆発を起こす。


「まずい!」


 魔法障壁を作り出し、俺は爆風を抑え込んだ。

 街への被害は、最小限で済む。

 負傷者も出していない。


「はあ、はあ。はあ……」


 すべてが終わって、俺は両膝を崩す。


「な、なんだこれは?」


 俺の眼前に、濃藍色の刀が突き刺さっていた。


「とうとう、俺もレアを落とすようになったのか?」


 そう思ったが、よく見ると違う。


「これは、ジュエルだ!」


 魔物なら、倒せばジュエルになる。

 どうやら、フィーンド・ジュエル……のようだが。


 なんだ、このジュエルは? 見たことがない。

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