ヴァスキーを追って:サピィサイド
サピロスが、アクセルを吹かす。
目の前にはもう、ヴァスキーの背中が見えている。
だが、わずかに届かない。
「シーデー、もっと速度を上げて!」
「承知!」
合図に合わせて、シーデーが加速する。
それにしても、ヴァスキーは大きい。威圧感も凄まじかった。
自分だけだったら、こんな作戦は考えつかなかったろう。
ランバートがいてくれるから、真正面から突破できるのだ。
彼に絶対の信頼を寄せているから。
ランバートがいなければ、もっと効率よくやる。
日を改めて、油断を誘って、戦力だって大量に削っていくはず。
しかし、それだと敵に悟られてしまう危険があった。
時間もかかりすぎる。
あの少女も、長時間こんな巨大兵器を操っていては、無事では済むまい。
「我が魔王の進軍を、邪魔するなぁ!」
来たか。ヴァイパー族が。
ヴァスキーの腕やシッポから、ヴァイパー族が姿を現す。
脚部に車輪を付け、高速移動できるように改造している。
「ぬうん!」
長いシッポを伸ばし、こちらの車両を転倒させようとしてきた。
ウィリーで、シーデーがシッポをよける。
「これなら!」
反対側のヴァイパーが、長い爪でフェリシアに斬りかかった。
本来なら、分厚いコンクリートさえチーズのように切り裂いてしまう。
フィーンド・ジュエルで強化されたシールドで、フェリシアはヴァイパーの爪を叩き折った。
「邪魔なのは、アンタよ!」
フェリシアが、ハンドキャノンを放つ。
安定したシューティングで、ヴァイパーの一体を粉々にした。
ヴァイパーの血で、他の兵隊が脚部車両を滑らせる。
地面に激突した拍子に爆発炎上した。
「もっと火力を下げてもいいでしょう」
秘密結社
パワーは温存しておきたい。
「そうね。これなら!」
再びフェリシアが、ヴァイパーに狙いを定める。
白銀の銃が火を吹き、確実にヴァイパーの眉間を撃ち抜いた。
その後もフェリシアは、一体一体確実に潰していく。
「すごい。ヴァイパー族の皮膚は、大魔道士のファイアーボールさえ通さないのに」
ヴァイパー族の特徴は、鋼鉄のような皮膚の硬さだ。
本来ならば接近戦で叩くか、大型ロケットが必要なくらいである。
攻撃力が規格外なランバートたちと共に旅をしているから、感覚がマヒしていた。
「フィーンド・ジュエルって、想像以上に強いのね。さすがサピィの力が宿っているだけあるわ」
「あなたの銃も、すばらしいです」
フェリシアの銃は、彼女の師である魔女が残していったパーツを、コナツがさらに組み直したものだ。
とてつもない威力を誇る。
さらに、フェリシアの射撃テクニックが合わさった。
「姫、まだワラワラ来ましたぞ!」
「面倒ですね」
思案していると、フェリシアが「任せて!」と銃を真上に構える。
「大技を使うけど、いいかしら?」
「この際です。構いません!」
魔力回復ができる【ダイヤ】ジュエルの在庫を確認し、サピィはOKした。
雷光が、フェリシアの銃に落ちる。
だが、フェリシアにダメージはない。
すべてのエネルギーを、銃が吸収してくれたようだ。
「くたばりなさい、【雷鳥弾】!」
銃を正面に構え直し、フェリシアが引き金を引く。
稲光を帯びた巨大な鳥が、ヴァイパーの群れへと水平に飛んでいく。
稲妻の翼が、ヴァイパーの首を次々とはねていった。
それでも勢いは止まらない。雷鳥はさらに旋回し、別の集団へと突き進む。
またも、ヴァイパーたちは胴を両断された。
ガクン、とヒザを崩して、フェリシアは座り込む。
「お疲れさまでした」
サピィが、フェリシアにダイヤを渡す。
フェリシアは、手甲にダイヤをはめ込んだ。
「元々、師匠の技なの。でも、うまくいったわ!」
だが、喜んでばかりもいられない。
最終防衛ラインっであるエルトリが、もう眼前に迫っている。
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