弔砲《ちょうほう》のプロイセン

 光の中心へ、俺は急いだ。


 サングラス男が、ヴァイパー族から集中砲火を浴びている。

 確か『弔砲ちょうほう』というコードネームだったか。


「よくも、我々ヴァイパーを利用してくれたな! 殺してくれる!」


 ヴァイパー族の火球をかわしながら、弔砲はランチャー型の右腕でヘビ人間共を吹き飛ばす。


χカイに味方は不要。この世界のものはすべて、χに使い潰される定めである。貴様らも。そして、このオレも」


 またも、ランチャーを放つ。


 周辺のヴァイパー族が、たった一人のハンターによって蹂躙された。


 やはり、この男は只者ではない。


「来たか、ランバート・ペイジ」


 サングラスの男が、俺の方を向く。


「俺の名を知っているのか?」

「ライバルを殺した男は、忘れない」


 男が、ジャケットを脱ぎ、上半身裸になった。

 全身が金属質である。

 サイボーグか。

 フォート族とは違い、有機質的なパーツも目立った。


「お前は、χに所属する闇ハンターか?」

「いかにも。オレは弔砲ちょうほうのライムント・プロイセン。デーニッツと争った仲だった。デーニッツを失い、新しいオモチャを探していたところだ」


 デーニッツを、オモチャ呼ばわりか。性格が、破綻している。


「キサマと戦うのを、楽しみにしていた。デーニッツを屠った力、はたしてオレにも通用するかな?」


 楽しそうに、プロイセンが笑う。


「酔狂で戦う趣味はない!」


 剣を構えて、魔力を込める。


「これ以上、街を混乱させるものか。おらあああ!」


 俺は右腕の付け根を狙って、Dディメンション・セイバーを放った。


 まずは、厄介な右腕をもらう。


 ソード・レイも、コナツに頼んでヴァージョンアップしている。


 風のフィーンドジュエルを、更に上位のものにした。

 範囲ダメージを、追加させてある。

 逃げ切れるものか。


「ふん!」


 Dセイバーの衝撃波を、プロイセンは腕を奮っただけで防いだ。


「銃身が硬い!」

「ビームランチャーだけが、オレの武器じゃない」


 勝ち誇ったように、プロイセンがニヤリと笑う。


「なんの!」


 もう数発、俺は衝撃波を打ち込む。


「何度やっても同じだ。この身体はレアアイテムには頼っていない。キサマの秘宝殺しレア・ブレイクも通じぬ」


 やはり、ランチャーを連発してプロイセンは衝撃波を消し飛ばす。

 一発も、俺の術が通じない。


 プロイセンも、アイテムのレア度に依存しない魔法職の疑いがあった。


「それはどうかな?」

「なにを?」


 だからこそ、サピィは俺にお前の打倒を託したのだ。


 おそらく、敵はなんらかの【秘宝殺し】対策を立てているだろう。

 完全に、俺を孤立させようとしている。

 この作戦だって、俺たちをまんまと分断させたと思っているに違いない。


 そこが、サピィの狙いだ。


「お前がランチャーだけを頼りにしていないように、俺も秘宝殺しだけが取り柄じゃない」


 今の俺は、魔法職一本で戦っていない。サムライなのだ。


「魔法職が、インファイト?」


 ああ。風のフィーンド・ジュエルを使って、アーマーに加速機能を追加してあった。

 プロイセンやデーニッツにも追いつける。


「くらえ、【介錯】!」


 俺は、プロイセンの首をはね飛ばした。

 介錯とは、クリティカルヒットを狙う技だ。


 プロイセンの頭部が、地面に転がっていく。

 そこに、何の生体反応も感じなかった。


 しかし、何かがおかしい。

 死体はいまだ、熱を放ったままだった。

 まるで、生きているかのような。


「なるほど。武装によって加速と腕力をアップさせ、オレの戦闘力を越えたか」


 首をはねたはずなのに、会話が聞こえてきた。


 しかし、頭部は無機質に転がっているだけ。


「腕がしゃべった?」


 その腕は、別の生き物のような形状をしている。


「ドラゴンの……頭?」


 丸太のような腕と思っていた物質は、竜の首だった。

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