軍事国家 エルトリ

「俺はχカイの動きを止めていればいいんだな?」

「はい。おそらく彼らもランバート、あなたをヴァスキーに近づけたくないでしょうから」

「どうして、俺が狙われれているとわかる?」

「ランバート、お忘れですか? あなたは数十キロ先にある廃墟ビルを、たやすくケロイド状にしたのですよ。ハンドキャノン一丁で」 


 なるほど。

 ビルを溶解させるような相手を、ヴァスキーと接触させたくないと。


 俺はヒルデたちを守ったときに、ビルごと狙撃手を溶かした。


「あなたの力でハンドキャノンを使えば、あの少女まで殺してしまいかねません。尋問した感じで、悪い子には見えませんでした。ヴァスキーに乗った少女は、生かしたいと思っています」


 まして今回使う武器は、フェリシアのために作られた特注品だ。

 どんな作用が働くか、わかったもんじゃない。


「そこまでいうなら、俺に反論はないよ」

「ありがとうございます、ランバート。勝手なことをいってごめんなさい」

「いいんだ。ヴァスキーを止めることができればいい」


 とにかく、サピィはフェリシア、シーデーと共にヴァスキーを地上から追う。


 俺たちはχの足を止めることに決定した。


「気をつけてね、ランバート」

「お前もな、フェリシア。ホントにケガは大丈夫なんだな?」


 サドラーのハンターギルドまで歩きながら、俺はフェリシアと語り合う。


「みんなのおかげで、どうにか完全回復したわ。みんなの魔法もそうだけど、サピィのジュエルってすごいのね?」

「俺の自慢の仲間だよ」


 そう俺が言うと、サピィが赤面して顔をそらす。


「ええ。サピィのおかげね。ありがとう」

「お礼はいいですから、行きますよ」


 ヘルメットを被って、フェリシアとサピィがバイク型シーデーに乗り込んだ。


「行ってきます。今回の敵は、デーニッツクラスだと思ってください」

「わかった。肝に銘じるさ」

「では」


 エンジンを全開にして、サピィはヴァイパーを追跡に向かう。


「俺たちも行くぞ、トウコ」

「わかったぞ、ランバート!」


 俺とトウコは、ヒルデ王女と三人で、ハンターギルドのポータルに。


 

 ヒルデを連れて、俺とトウコはエルトリに先回りした。


 エルトリのハンターギルドは、サドラーに比べると軍事色が強い。

 兵舎に来たみたいだ。


「ありがとう、ヒルデ王女」


 あたりを見回しながら、ヒルデ王女はため息をつく。


「……わたくしの役割は、ここまでのようですね」


 本当は、共に戦いたかったのだろう。

 しかしヒルデは、自分が場違いだと瞬時に気づいたらしい。


「申し訳ありません、お役に立てず」

「気に病むことはない。連れてきてくれただけでも、ありがたいんだ」

「そうおっしゃっていだだけるだけでも」


 頭を下げて、ヒルデ王女は顔を上げた際に笑顔を見せた。


「わたくしは引き続き、サドラーの復旧にあたります。ランバートさまに、トウコさま。お気をつけて」

「助かった。サドラーで会おう」


 ポータルでサドラーへ帰るヒルデを見送る。


「俺たちも行こう。街は大混乱のはずだ」


 外では、ハンターたちがヴァイパー族と戦っていた。

 χの姿は見当たらない。本当に、ヒューコに集結しているようだな。


「トウコは、ハンターたちの応援に向かってくれ」


 ヒーラーであるトウコがいれば、ハンターの生存率がかなり上がるはずだ。


「俺は、俺の敵を探す」

「わかったぞー」


 ヴァイパー族を蹴散らしながら、トウコがハンターたちと合流した。


「さて、俺も! オラオラ!」


 Dディメンション・セイバーを放ちながら、ヴァイパー族を切り裂いていく。


 派手に暴れていれば、相手も見つけやすいだろう。


 都市の中央で、光の柱が立つ。


 紫色の火柱へ向かうと、ヴァイパー族の死体がドサドサと振ってきた。


 あれだけの威力は、並のハンターでは出せない。


 ヴァイパー族とχは、本格的に対立が始まったようだ。


「あそこだな」


 俺の敵は、火柱の中心にいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る