盗賊団を無力化:サピィサイド
「ふむ。さすが姫様ですな」
しかし、「可能性がある」というだけで確証はない。
「おう、なんだってんだ!? 人をかわいそうなものでも見る目をしやがって!」
「実際かわいそうなので」
「どういう意味だ!?」
ゼンと双頭の蛇が、顔をしかめた。
「あなたは、見殺しにされたみたいです」
「んだとぉ――うおぅ!?」
何かが沈んでいくような、地鳴りがする。
全身が揺れる感じではない。が、危険な予感はした。
「何事です?」
「サドラー城で、動きがあったようです!」
ハンターギルドの看守によると、サドラー城が襲撃を受けたらしい。
ランバートの身に、なにか起きたか?
「おい、またオレを置いていくのか?」
「ちょっと用事ができました。おやすみなさい」
サピロスが杖を、シーデーが銃を構え、同時に起動させた。
催眠ガスを撒く。
「ぐっ! くうううう……」
抵抗しようとしたが、ムダである。
ありったけの【パール】で、『催眠』の状態異常を引き起こしてあるのだ。
象でさえ、一晩は眠るだろう。
「シーデー、移動モードへ」
「御意」
バイクに変形し、サドラーの城へ急ぐ。
ゼンからは、聞きたいことなどまるで聞けなかった。
とはいえ、敵に動きがあったのである。
ということは、彼らの目的はハッキリするだろう。
ケロイド状になった廃墟ビルを横切る。
「おやおや。随分と派手に暴れましたね、ランバートは」
銃か、魔法か。とにかく凄まじい攻撃だ。
ライフルを持った狙撃手らしき男たちが、矢を打たれて死んでいる。
各国のVIPを、スナイパーが攻撃したか。
「あらあら、まあまあ」
「ランバート殿の功績でしょうな」
狙撃手を倒すため、ビルごと破壊するとは。
ランバートは、どこまで強くなるのだろう?
「あの方は、自分がいかに強力で頼もしい力を手にしているか、まるで理解していませんね」
「フィーンド・ジュエルの加護だと思っているフシがありますな」
ランバートの力は、彼自身の素質だ。
「その気になれば、ランバートは魔王だって倒せるでしょう」
「さすがに言い過ぎでは?」
「わたしは、彼ならこの世界をもっと安全な地域にできると思っています」
フィーンド・ジュエルの力を、ここまで引き出せる。
ランバートの成長は、サピロスの想像を遥かに超えていた。
「今回の戦いで、彼は認識するでしょう」
「その前に、我々は成すべきことがございますぞ、姫よ」
サピロスは、バイクを止める。
目の前に、バデム盗賊団が。全員が、バイクで武装している。
「道を開けなさい、といっても聞かないでしょうね」
アクセルを全開にして、盗賊団を迎え撃つ。
「シーデー、サイドカー型のドローンを解放。ザコを撃墜しなさい」
「承知!」
サイドカーが、元のモジュールへと戻った。
サピロスはバイク型シーデーをウィリーさせ、ガレキからジャンプする。
「マジック・ミサイル!」
こちらを取り囲む盗賊団に、サピロスは手をかざした。
盗賊団がこちらを見上げているスキに、正面からドローンでミサイルを放つ。
ドローンから発射されたミサイルが、相手のバイクだけを撃墜していった。
全員が足を負傷し、逃げられなくなっている。
シーデーが戦闘モードに変形した。
指マシンガンで、的確に盗賊団の武装を壊す。
相手の戦意を削ぐため、機械的に敵の武装を解除していった。
「頭領は捕らえなさい。他は……そうですね、生死は問いません」
「かしこまりました」
会話を聞いただけで、バデム盗賊団が怯む。
相手は女で、たった一人だ。
簡単に御せると思ったのだろう。
圧倒的な差を見せつけられ、攻撃が止んだ。
そのスキに、サピロスは頭領へ杖を突きつけた。
「死にたくなければ、答えなさい。誰に雇われましたか? エルトリですか? それとも」
「ヒューコ! ヒューコの過激派だ!」
やはりそうか。
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