χ《カイ》の狙撃手
ショッキングな光景に、ヒルデがめまいを起こした。床へ倒れ込そうに。
「まずい! トウコ!」
「よっしゃ! ヒルデ、フェリシアに近づいちゃダメだーっ!」
機転を利かせて、トウコがヒルデに飛びかかってかばう。
「ランバート、ここはあたしに任せろ!」
ふらつきながらも暴れるヒルデをなだめながら、トウコはフェリシアに近づく。
「頼む!」
「よーしっ! ヒルデ隠れるんだ!」
ヒルデには、机の下に隠れてもらった。
「トウコ、フェリシアを! 俺はバリアを張る!」
「オッケーッ!」
フェリシアの元へどうにかたどり着き、トウコが治療を開始する。
「よかった。キズは浅いぞ。おっとぉのヨロイと、フィーンド・ジュエルのおかげだ!」
治癒効果のあるダイヤの加護で、フェリシアはどうにか一命はとりとめているという。
「全員窓から離れろ! 次が来るぞ!」
窓に向けて、俺は障壁を展開する。
瞬間、ドンという重い一発が着弾した。
障壁が、あっという間に崩れ去る。
なんてパワーだ。
しかし、これだけの威力である。
さっきフェリシアに当ててからも、かなりの時間が経過していた。
発射までに、時間がかかるらしい。
しかし、相手はどこから狙っているのか。
窓の向こうは、背が高い建物ばかりだ。
「トパーズ・エンチャント!」
俺は、弓矢を装備した。
フィーンドジュエル・トパーズのサーチ能力を使って、確実に相手を仕留めるために。
エンチャントで、威力も上げた。
「なんか光った! あのタワーにいるぞ!」
フェリシアを治療しながら、トウコが窓の向こうを指差す。
「どこだ?」
「タワーの屋根の上!」
撃った相手が、ポイントを変えているのが見えた。
「おらああ!」
弓を引き絞り、トパーズの矢を放つ。
狙撃手を、雷の矢が貫く。
腕を撃たれたスナイパーが、転落していった。
「まだいるぞ! 廃墟ビルの屋上に一人!」
「よし。おらあ!」
立て続けに、二の矢を撃つ。
しかし、相手に武器でガードされた。
「狙撃手は三人! あと二人だ! もうひとりはビルの下の階!」
逃げているVIPを狙っているのか。
「いくぞおらあ!」
さらにもう一発を発射する。
下の階にいた狙撃手が、脳天を貫かれてビルから落ちていく。
残りは一人だ。しかし、相手はこちらの矢を防いでいる。
当てられるか?
「あと一人なのに……っん?」
俺の足に、ハンドキャノンがぶつかった。
息も絶え絶えなフェリシアが、俺の方へ投げよこしたのである。
「借りるぞ、フェリシア! くらえ! エンチャント!」
エンチャントを施したトパーズをハンドキャノンに装着し、構えた。
狙撃手が、ニヤついているところが見える。
「風のエメラルドも乗せてやるぜ! 届けぇ!」
火炎属性のルビーまで、おまけしておいてやるぜ。
引き金を引くと、ドウンッ! と、激しい音が鳴り響いた。
その後、ズウウン……と、ビルが液状化して狙撃手もろとも飲み込んでいく。
「ランバート、やりすぎだろ」
呆れ顔で、トウコが眉間にシワを寄せる。
「俺のせいじゃない!?」
それより、早く運ばないと。
とはいえ、召喚獣は大きすぎてドアから出られないだろう。
サモエドもハムスターも、狭い城内を逃げるにはでかすぎる。
「早く逃げるぞ」
フェリシアを抱えようとしたときだった。
別の腕が、フェリシアをお姫様抱っこする。
その太い腕の正体は、エルトリの大臣だった。
「おじいさま?」
祖父の腕に抱えられながら、フェリシアは困惑する。
甘えていいのかどうか、戸惑っているように見えた。
「お主に祖父と呼ばれる資格はないのかもしれん。しかし、助けてもらった恩を返さねば、ワシは人でなくなる」
「ありがとう、おっさん」
「おっさ……コホン」
俺が礼を言うと、大臣は早く部屋から出るよう俺たちに催促する。
「みんなはどこへ?」
「地下じゃ。いよいよヴァイパー用の兵器を起動させるのかもしれん」
だが、そこには異様な光景が。
サドラー王を、ヒューコの大臣が人質にとっていたのである。
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