ヘビの術者と、χ《カイ》の刺客

「当てろよクソヤロウ!」

「うるせえなバカヤロウ! テメエがやれってんだ!」

「おう、見てろよノーコン!」


 赤いヘビが炎のムチでできた舌で攻撃してきた。


「オラオラッ!」


 俺もソード・レイで迎え撃つ。


 衝撃のたびに、ヘビの舌とソード・レイが火花を散らす。


「グヘヘヘア! 受け止めているだけじゃ、オレらは倒せなビイ!」


 ゲラゲラ笑っていた赤ヘビが、ガレキに頭をぶつけて失神する。 


 もうひとりのサングラス男は、不敵に笑うだけ。

 とてつもないスピードを出しているにも関わらず、平然としている。


χカイから来たやつ、てめえも戦いやがれ!」


 青いヘビが、並走するサングラスに悪態をついた。 


 サングラスの男が、手をかざす。


 掌には、ヴァイパー族の目玉が。


「あれは、ブートレグです!」


 体内にブートレグを埋め込むとは。アイツもサイボーグか。


 サングラスが、手からファイアーボールを放つ。


 ハンドルをさばき、火球を紙一重でかわす。

 しかも、速度は全く落ちていない。むしろ加速する。


「おらああ!」


 俺も、Dディメンションセイバーをサングラスに撃ち込んだ。


 しかし、身体をさばくだけでよけられてしまう。


 追尾機能があるDセイバーを、目玉からの火球で破壊した。


「今は戦う機会ではない。また会おう」


 サングラスは、左のバイクを置き去りにしてあさっての方向へ走り去る。


 逃げられてしまったか。


「おい、オレらをおいていくな! へぐあ!?」


 俺たちが撃墜するまでもなく、ヘビ女が業務用ゴミ箱へ激突した。

 仲間が勝手に離脱し、よそ見をしていたからだ。


 ゴミ箱の中で気を失っている少女を、サピィと共に確認する。


「ヘビの方も、目を回しているな」


 材質が固く、平べったい。やはり金属か。


「形状記憶合金タイプの、ブートレグですね」


 このヘビたちは、使い魔のようだ。

 術士が気を失うと、使い魔も機能を停止する体質らしい。


「ヘビが顔から離れないな」


 身体と一体化しているようだ。

 ヘタに外そうとすると、ケガをしてしまうだろう。


「ブートレグには、汚染されていません。が、サイボーグです。バイクはブートレグを用いていたようですが」


 しかし、サイボーグ化してブートレグの汚染を免れるとは。 

 他に倒した死体も、サイボーグだった。

 どうも、汚染を回避する成功率はかなり低いらしい。


「王女が心配だ。急ごう」


 さっきのカフェへ戻ると、やはりブートレグ使いのバイカーが王女に襲いかかっていた。


「危ない!」


 俺が攻撃しようとすると、突然にデカイ四足歩行動物が敵ハンターを蹴散らす。

 体当たりで敵バイクをふっとばし、落下したハンターの背中を踏みつけた。


「うおお! やっちまえ!」


 操っているのは、トウコらしい。そういえば、ペットがほしいって言っていたっけ。


「おおー。帰ってきたかー」


 こちらに気づいたトウコが、俺たちの方へ手を振った。


「ケガはないか、王女?」

「無事です。街を守ってくださって、ありがとうございました」


 王女が、俺たちに頭を下げる。


「見ろよー。王女に召喚の方法を教わったらできたんだぞー」


 トウコが撫でているのは、モフモフのオオカミ? である。


「モフモフだ! かわいいオオカミだろお」


 オオカミらしき召喚獣の背中に、トウコは飛び乗った。

 トウコが乗れるギリギリのサイズである。


 それにしても、オオカミと言う割には短足すぎる。

 これはもしかすると……。


「……おいトウコ。非常に言いにくいんだが、それは犬だ」

「え?」


 トウコが、目を丸くした。


「サモエドという犬種ですね。サイズは従来種と比較すると桁違いですが」


 俺の意見に、サピィも同意する。


 多分、トウコのスキルポイントが少なすぎたから、オオカミクラスのヤツは呼べなかったようだ。


「そうかー。でもかわいいからお前に決めたぞ!」


 召喚獣として、このサモエドにすると決めたらしい。


「これで高速移動しながら戦闘ができるなー。機動馬車の中だと戦闘できないからなー」


 トウコが納得しているなら、いいか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る