第二部 敵の名は、海賊版《ブートレグ》
2-1 殴りウィザード、王様に会いに行きます。
女騎士
「おらあああ!」
俺は刃のない武器【ソード・レイ】から光の刃を射出した。
光刃から、衝撃波を撃つスキル【
「あぎゃあああ!」
盗賊団のバイクが、俺の攻撃を受けて両断された。
「よくやったランバートッ! チェストォ!」
足であるバイクをなくした相手に、モンクの「トウコ・フドー」が殴りかかる。
ペールディネがジェンマ・ダミアーニの襲撃に遭った翌日のことだ。
今度は、盗賊団が群れをなしてペールディネを襲ってきたのである。
よくある火事場泥棒というやつだ。
しかも、全員が【オミナス】、つまり呪われたアイテムで武装していた。
「くそ、数が多いな!」
「しかも、バイクで群れをなしているために対処が難しいです!」
魔術師「サピィ・ポリーニ」が、杖から【マジック・ミサイル】という小型ミサイルを放つ。
彼女は少女の姿を取っているが、その実体はスライムで、【魔王】でもある。
「ぬう、街の施設を気にせなんだら、指マシンガンで一掃できますのに!」
フォート族という二足歩行ロボットの「シーデー」も、無数の盗賊相手に攻めあぐねていた。
他のハンターたちは、乗り物で応対して盗賊団を蹴散らしている。
俺たちには、乗り物がない。
迫ってくるバイクを無力化して、撃墜していくのが精一杯だ。
しかし、オミナスを打倒できるのは、俺の特殊スキルである【
奴らがどこから来て、誰の指示で動いているのか、知る必要がある。
「ヤロウ、ちょこざいな!」
盗賊団の頭領らしき人物が、バイクに乗りながら近づいてくる。
「オラオラ!」
Dセイバーで迎え撃つ。
「こしゃくな!」
頭領のバイクがオレンジ色に輝く。
俺の撃ったDセイバーが、霧散してしまった。
「マジック・シールドだと!?」
あんな高レベルのマジック・シールドを展開できるのか。
頭領が、頬を手の甲で拭き取る。
障壁を貫通したセイバーが、顔をかすめたらしい。
「白兵戦でいくしかないか!」
俺は、光刃を分厚くした。
俺のソード・レイは、出力を上げるごとに物理剣と同等の高度を維持できる。
「魔法使いごときが、【ドラグーン】の俺に敵うものか!」
なるほど、ドラグーンか。となるとあの装甲車両も、小型のドラゴンというわけだな。
「いけ【ワイバーン】! あのヒョロ男を轢き殺してしまえ!」
ドラグーンが号令をかけると、ワイバーンというバイクが咆哮を上げた。
「ランバート!?」
サピィの声が、俺の耳に入ってきた。
「ムダだ! 『全身どころか、バイクさえレアアイテムで固めた』オレサマに勝てるものか!」
頭領が、下卑た笑い声を上げて勝利を確信する。
大丈夫だ、サピィよ。
もう勝負はついた。
「俺は、ただの魔法使いではない。俺はサムライ。人呼んで、【殴りウィザード】だっ!」
装備品に埋め込まれた、フィーンドジュエルを起動させる。
赤のルビーで、筋力をアップした。
緑のエメラルドで、剣を振る速度を上げる。
黄色のトパーズによる探知能力で、確実に当てられるように狙いを定めた。
武器のソード・レイには、氷結の力を持つサファイアを使う。相手の動きを止めるためだ。
粒状になった黄金色の光を放つ黒い宝石、オニキスの力も追加で宿す。威力が弱まる代わりに、相手のあらゆる属性防御を無効化するのだ。
ドラグーンと俺の距離がゼロになる。
「【一刀両断】!」
俺は、剣を振り下ろす。
たったそれだけのことで、ドラグーンは俺を避けて真っ二つに。
「ばかなはがああぁ!」
支点を失い、ヨレヨレとドラグーンが倒れ込む。
「おおおお、親方がぁ!」
「やべえ! 逃げろ!」
頭を殺され、盗賊団が脱兎のごとく逃げ出す。
しかし、彼らのエンジンが火を吹くことはなかった。
どこからともなく矢が飛んできて、盗賊団を一人残らず射抜いたのである。
指揮をしているのは、一人の女騎士だった。
黒いインナーの上から、金色のヨロイで身を固めた、古風な武装の女性である。
全身が燃え盛った馬に乗って、女騎士は盗賊団の残党を切り捨てていく。
「けがをしている人はいない?」
「問題ありません、フェリシア様!」
「よし、引き上げだ」
フェリシアという女騎士は、兵隊を率いてこの場から姿を消した。
「あれは、ペールディネの騎士団か」
「随分と、前時代的ですね」
「とにかく、サピィが出かける前に傷害がなくなってよかった」
「ええ、気遣ってくださってありがとう、ランバート」
サピィは明日、友人の葬儀へと向かうのだ。
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