第一部 完 王からの呼び出し
「すまん。あんたの父親を、最期で追い詰めてしまった」
「いいえランバートさん。父はいずれ、ああなる運命だったのです」
カミルは、ハンター業に取り憑かれた父をそう形容した。
「父を止めてくださって、ありがとうございました」
「いや、俺は」
俺は首を振る。
グレースに肩を抱かれながら、カミルは店の方へと去っていく。彼も、配給に手を貸すという。
「サピィ、俺は、二人を会わせてよかったのだろうか?」
避難所へ戻る足で、俺はサピィに尋ねる。
「あなたは、すべきことを全うしました」
質問に、サピィは首を振りながら答えた。
「デーニッツ氏を止めることは、あなたにしかできなかったでしょう。ペールディネ最強のハンターですら、彼には手も足も出ませんでしたから」
「ありがとう、サピィ」
俺は、避難所へ戻ってきた。負傷者の治療にあたる。
「ところで、あの女はどうなっていたんだ? まるで、意味がわからない」
「あいつは、ジェンマではありませんでした」
サピィは、騎士の腕に包帯を巻く。
「親友に父親を殺されたんだ。お前がショックを受けるのは仕方がな――」
「違うんです! アイツは、もうジェンマ・ダミアーニではありません。魔族ですらなかった!」
サピィは、悲痛な叫びを上げた。
俺は、サピィからオミナスの特性を聞かされる。
「そうか。ジェンマは呪われたアイテムに乗っ取られていたと」
「オミナスの、魔族への恨みは強いです。想像以上でした」
コナツのいる配給所に、人だかりができていた。
騎士たちがゾロゾロと、退散していく。
「なにがあった、コナツ?」
荒らされた痕跡はない。クレームの類ではなかったようでホッとした。
「王様がな、ここでジュエル装備の商売しないかってよ」
詳しくは、王都で商談してほしいとのことだ。
ペールディネの国王は、フィーンドジュエルやそれを用いたコナツの開発品に、興味を示しているらしい。なにより、その装備のおかげで街は救われたと。
「すごいじゃないですか。ランバート、コナツさん。ぜひ、もっと広めましょう」
「それなんだが、元々の店をどうするか」
寝床や機材などは、まだアイレーナの街にある。店を始めるにしても、することがたくさんあった。アイレーナから移動させるにせよ、新たに揃えるとしても。
「なにより、王様がお呼びだとよ。クリムがいないから、余計にお前さんに関心を持っているらしい。王直々に、話がしたいそうだ」
俺の分の招待状を、コナツから渡される。
「貢献者は、俺よりサピィなんだが」
「それは、やめたほうがいいな」
「やはり、か」
今は人間の姿をしているが、サピィは魔族だ。話し合うには、まだまだ時間がかかりそうである。
「悪いがサピィ、キミは連れていけない」
「構いません。私も用を済ませます」
「これからどうするんだ?」
「魔王ダミアーニに会ってきます。それから考えましょう」
なにより、亡き友であるジェンマの葬儀に行きたいという。
「父の仇とはいえ、彼女にも事情があったと、私は考えています。いえ、私がそう思いたいだけなのかもしれませんけれど」
どういう最悪な事実が待っていようとも、真実を突き止めたいと。
「なにより、彼女がいつオミナスを手に入れたのか。それが気がかりで」
「ついていこうか?」
しばらく考え込み、サピィは答えを出した。
「やめておいた方がいいですね。私でさえ、魔族から疎まれているのです。人間に手を貸したのですから。その上、人間であるあなたまで連れていけば。正直、まとまる話もどうなるか」
そこまで言われては、ついていくのはやめたほうがいいな。
「ペールディネ王が私にも用があるなら、是非にとよろしくお伝えください」
魔族、それも、魔王クラスが関与していると話していいらしい。
「わかった。じゃあ、王に会ってくる」
(第一部 完)
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