入浴:サピィサイド

 サピロスは、フェリシアとトウコと浴場へ。


「ランバートも入ればよかったのになー」


 速攻で服を脱ぎ、トウコは大浴場へダイブする。


「さすがに、フェリシアに遠慮したのでしょう」

「私も、そこまで気にしてはいなかったのだけれど」


 フェリシアも、湯船に浸かった。


「おじい様がサドラーにいらっしゃること、気になりますか?」

「ええ、気にならないといえばウソになるわね」

「エルトリに戻ったことはなくて?」

「そうよ。おじい様とは、顔さえ合わせたことはないわ。あっても赤ん坊の頃でしょうね」


 親戚の顔も知らず、彼女は魔女と二人で訓練に明け暮れていたことになる。


「お辛かったでしょうね」

「そうでもないわ。元々いないものだと思っていれば、苦じゃなかった。魔女が毒親みたいな奴だったら、私も逃げ出していたかも知れないけれど」


 厳しくも愛情を注いでくれていた魔女に、感謝しているという。


「ペールディネのお城に迎えられたときのほうが、あまり歓迎はされていなかったわね。問題児の子どもだったもの」


 迎え入れてくれたのは、歳の離れた兄である王だけ。


 顔では笑っているが、フェリシアは想像を絶する孤独を抱えていたに違いない。


「あなたはどうなの、サピィ?」

「わたしは、産まれてすぐに母を亡くし、父と二人で暮らしていました」

「お母様が、どんな方だったとかは?」


 サピィは首を振る。


「写真を見せてもらいましたが、わたしが髪を長くすれば生き写しだと父は語っていました」


 母はサピロスを宿してすぐ、流行り病にかかってしまったとか。


「最初は平穏だったのですが」


 友人であるジェンマに父は反逆者の汚名を着せられ、殺害されてしまった。

 サピロス自身も、逃亡を余儀なくされる。力の大半を失い、よくここまで持ち直した。


「ランバートのおかげです。彼がいなければ、わたしは野垂れ死んでいたでしょう。シーデーにも、感謝しかありません」

「あなた、ランバートに惹かれているのね」

「ふわぅ!?」


 サピロスは、慌てて顔を隠す。


「な、なにをおっしゃって?」

「隠さなくてもいいわよ。ランバートのことを話す」


 たしかに、自分の中でランバートは特別な存在のように思う。しかし、あまり意識したことはなかった。


「私は、種族を超えた恋愛って素敵だと思うわよ。私自身が恋愛に興味がないから、どうとでもいえるのかも知れないけれど」


 肩に湯をかけながら、フェリシアは語る。


「いいんじゃないの? コナツの一家を見てみなさいな。あんなあったかい家庭を、あなたにも作れるんじゃないかしら?」


 果たして、自分に家族なんて作れるのだろうか。


「なー、前から気になっていたんだが?」


 トウコが、こちらへ寄ってくる。


「何よ、トウコ?」

「サピィとフェリシアって、どっちがおっぱい大きいんだ?」

「はぁ?」

「だって、比べる機会とかなかったじゃん」

「そういえばそうね」


 突然、フェリシアが立ち上がった。


 ドンという存在感が、サピロスの前に。


「おーっ。弾力がものすごい。弾むぞ!」


 手でフェリシアの胸を揉みしだきながら、トウコが感想を述べた。


 確かに、フェリシアの胸にはハリがある。ツンと突き出ていた。ロケットオッパイをいうべきか。


「ほら、あなたも立つのよ」


 フェリシアに手を引かれ、サピロスも湯船から立ち上がる。


「おー、これは測定不能だな! 絶景かな」


 トウコが、二人の双丘を眺めながら拝みだす。


「失礼して。うおおお、これぞまさしくスライムボディ! ムチムチだ!」


 両手で、トウコがサピロスの胸を鷲掴みにした。


「おっかあはデカイんだが、あたしは平坦なのだ。男の子みたいと言われるぞ」

「まだ成長期なのよ。これからでしょ?」

「それもそうだな!」


 こうして、バスト鑑賞会を終える。


 湿っぽくなった空気を、トウコは少しでも和らげてくれたのだろう。

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