フドー家の洗礼
フェリシアが口笛を鳴らす。
炎をまとった一角獣が、地面を突き破った。
「うわ、なんだ!?」
全身が燃え盛る一角獣に、フェリシアはまたがる。
「
フェリシアも、ゴブリン相手に試し打ちを初めた。
引き金を引くと、ゴブリンが大爆発を起こす。
「すごいわね。ゴブリンが消し飛ぶわ」
ソードオフの調子は最高らしい。
「使い心地はどうだ? 不具合は?」
「ないわね。なにもかも完璧よ」
腕に魔力量をアップするサファイアと魔力を回復させるダイヤを埋めた籠手をはめている。
そのために、弾切れの心配もないそうだ。
コナツの店の前に、男女のドワーフが。
彼らが、ペールディネの従業員か。
「紹介する。ペールディネの店員だ。男がギン、女のほうがスズだ」
ペールディネのポータルから、戻ってきたらしい。
男性の方は「よろしくおねがいします」と丁寧に頭を下げる。
女性の方は黙礼した。
ギンはしっかりもので、スズはおっとりしたタイプである。
「じゃ、今日はペールディネでの売り込み会議といきますか!」
コナツが、俺たちを食事用の大部屋へと招く。
「少し早いが、もう食って仮眠を取ろう」
今日は闇ギルドを追うため、夜中に行動する。
「あ、そうか。この家には、これがあるのよね」
フェリシアが、ため息をついた。
コナツの家には、鍋という洗礼がある。誰でも、この鍋には抗えない。
今日はペールディネで得た食材を使って、豪華な海鮮となった。
「相変わらずうまいよ、コナツ」
「おうよ。カカァのメシは天下一だぜ」
中でも、イワシのつみれが最高だ。
「うっぷ。でもおいしいわ」
腹が満たされても、フェリシアの箸が止まらない。
「こうして家族と食事を囲むっていいわね、サピィ」
「そうですね、フェリシア」
二人は共に、家族と疎遠になってしまった。
この二人だからこそ、仲間や家族のありがたさを噛み締めているのだろう。
同じように家族のいない俺にも、サピィたちの気持ちはよくわかる。
「よっしゃ、腹も落ち着いたからな。話を聞こうか?」
鍋を囲んで、商売の作戦会議となった。
ペールディネにいるハンターたちの傾向などを聞く。
「向こうは、見栄っ張りが多いですね。高級品ばかり欲しがってまさぁ」
「女性も、実用性よりきらびやかなものを好んでいる様子ですね」
ギンとスズの会話を聞きながら、コナツは腕を組む。
「んじゃ、路線を変えるか。細工のウマいやつを鍛えるついでで、オシャレ系で攻めよう」
『無骨な武器こそドワーフ装備』と言わない辺りが、コナツのすごいところだ。
家族を食わせるために、こだわりを捨てているわけじゃない。
自分のできることをしているだけ。
できないことは、できるものに任せる。
その割り振りが達者なのだ。
「ブートレグに手を出す人は、いましたか?」
不安げに、サピィが尋ねた。
強くなりたければ、呪いのアイテムにさえ手を出す者はいるのではないか。
その心配はある。
「いいえ。元司教が代表して、ブートレグの恐ろしさをふれて回っています」
悪評のほうが勝っており、ブートレグはペールディネに広まっていないらしい。
ハンターギルドからも、ブートレグは発見しても触らないようにと通達があるという。
「闇ギルドに動きは?」
「ありません。ただ、サドラーに闇ギルドが出入りしているという話はペールディネでも広まっていますね」
「
「一部の凄腕ハンターは、χって闇ギルドの名前を口にしていました。あんな大規模にブートレグを下ろすようなヤツラは、χしか考えられないって」
俺の質問に、スズが返答する。
「そうそう。今日、ペールディネにエルトリから来客が。明日その人物は、サドラーへ向かうそうです」
「誰だ?」
「エルトリの大臣です」
フェリシアの祖父が、サドラーに?
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