試し打ちと、召喚

 人間の上半身を形作った看板が、横移動で現れた。


「撃ってみな」

「弾は? 入っていないわ」


 銃の薬室を、フェリシアは確認する。


「魔力を込めな。銃身を回せば魔力が充填されるぜ」


 言われたとおり、フェリシアは銃を回した。スピンコックという技術である。銃を回した後、瞬時に引き金を引く。


 人型が、跡形もなく吹っ飛ぶ。


「気に入ったかい?」

「ええ。でも、うまく扱えるかしら? ハンドキャノンは、完成してから使おうと思っていたから」

「それはやめときな」と、コナツは首を振った。

「銃が手に入ったのに扱えませんでした、なんて許されねえ。未熟は速攻で、死につながらぁ。そんな世界なんだぜ」 

「ありがとう。心得ておくわ」


 革製のホルスターを装備する。


「次はこっちかな?」


 折りたたみ式のハルバートを、コナツが用意した。


「多節棍をハルバートに改造した。大多数の乱戦か、大型ボスにとどめを刺すときに使いな」

「ありがとう。パワー不足が補われたわ」


 近接用に剣と盾、中距離用に槍、遠距離用に銃と、フェリシアの武装が大幅にアップしている。フェリシアの戦闘力なら、使い分けも問題ない。


「で、他の装備だが……」


 フェリシアのヨロイについては、まだ開発途中だという。


「一応、コンセプトとしては間違ってねえと思うが、ハンパな代物では満足できまいて。ちょっくらステータスをのぞかせてもらっても?」

「いいわよ? なんなら測定も」

「結構。ヨロイを調べたら、あらかたのサイズはわかるんだ。なにより、カカァに殺されちまう」


 さすが既婚者だ。女性への接し方に関して、線引きをわかっている。


「なるほどな。雷使いってことは、ダイヤとサファイアを入れた方がいいか。武器はトパーズ確定として、スピード補助のためにエメラルドも。しかし、あんまりジュエルで補強しすぎると、肝心の防御力が」


 フェリシアのステータスを見ながら、コナツが唸る。


「あんたはどうしたい?」

「基本、壁役を引き受けるわ。いざとなったら攻撃側にまわる」

「スキルはバッシュに、スマイトがあるな。じゃあ、物理盾に抵抗はないな?」

「もちろん」

「よし! コンセプトは決まった。あとはジュエルだけだったから、用意する」


 コナツは、ジュエルをフェリシアの装備に組み込んだ。


 フェリシアが、できあがったヨロイをまとう。


 バトルレオタードはそのままに、肩当てが追加された。


 コナツによると、フェリシアが持ってきたヨロイを改造したそうだ。


「使わなくていいって言ったのに」

「いやいや。あんな高級素材、使わない手はないでしょ」


 高貴な意匠をそのままに、動きやすいスタイリッシュな武装になっている。


「軍規違反なら言ってくれ。これだけいじっていようが、作り直せるからよぉ」


 堂々と言い張るコナツの手腕に、フェリシアも舌を巻く。 


 これで、フェリシアの装備見直しは完了した。


「あとは、トウコの召喚獣を改めて見直すか」

「召喚を取ったのか。だったら待ってろ」


 コナツが、トウコに金属製の首輪を渡す。魔力が回復するダイヤ、複数の敵を巻き込むエメラルド、敵を察知するトパーズがはめられていた。


「これなら、召喚でガス欠にならん。腕に付けていろ」

「ありがと、おっとお!」


 召喚した巨大サモエドに、トウコが首輪をはめる。


 これで、サモエドは正式にトウコ専用のペットとなった。


 街の外にいる魔物を相手に、トウコは訓練を開始する。


 魔物と戦いながら、トウコはハシャぐ。


「よーし、いいぞー。ユキオ!」

「ユキオ?」

「見た目が雪男みたいだから、ユキオ!」


 雪のように白いからではなく、雪男みたいな見た目だから名付けたという。

 そんなところが、いかにもトウコらしい。


 これで、機動馬車に頼らなくても移動が可能に……ん?


「待てよ。フェリシアだけ乗り物がないな」

「心配いらないわ。召喚なら、こっちも」

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