ブートレグに侵されたハンター

 俺たちは、現場へと直行した。


 市街地で、複数のハンターがデッカーと戦っている。


「フェリシアとトウコは、王女を頼む!」

「わかった!」


 足がすくんで動けなくなっている王女を、トウコがかばう。


「任せて!」


 慕っているフェリシアが横についていれば、王女も安心するはずだ。 


「あの武器は、ブートレグです!」


 サピィの指摘どおり、ハンターの手にはヴァイパー族の牙や爪を使った装備が。


「拾ったアイテムを、無理やり使ったのか?」


 まだ、潰しきれてないダンジョン型のブートレグ製造工場があったか? それとも、元々ブートレグとわかって装備した?


「とにかく、やるしかない」


 俺は、呪われたハンターとデッカーの戦いを見る。ハンター同士の戦闘はご法度だ。しかし、ギルドの事務員も戦っている。殺傷の許可は出ているように思えた。


 呪われたハンターは、五人である。


 敵ハンターの一人は、蜂の巣になって仰向けになっていた。


 しかし、デッカーは攻めあぐねている。一人の動きが早すぎて、ドローンや戦車の攻撃が当たらないのだ。

 逆に、その素早いハンターはデッカーを一撃で倒す。


「なんて強さだ!」

「しかし、装備の力に頼り切った戦い方です。御しやすいかと!」


 デッカーを倒したハンターが、俺たちに向かってくる。


「よし。おらあ!」


 Dディメンション・セイバーで、ハンターを仕留めた。もちろん、秘宝殺しレア・ブレイクを発動させて。


 斬られたハンターは、死んでいる。

 目の焦点が合っていない。

 完全に、ブートレグに飲まれている。


「これはもう、秘宝殺しを行使しても……」


 魂まで、壊されてしまったか。


「敵はまだいるぞ!」


 もうひとりが、こちらに向かってきた。

 槍使いである。

 デッカーたちの銃撃も弾き飛ばし、彼らの操るモジュールを破壊した。


「秘宝殺しが無意味なら、手加減は無用!」


 シーデーが、槍使いに飛びかかる。

 相手の攻撃に合わせてガードをし、槍を掴む。


「今です!」


 攻撃が止んだスキに、ドローンを一斉射撃した。


 ハンターが息絶える。


「ぐぬううう!」


 だが、別のハンターが銃撃をシーデーに打ち込んだ。


「わが部下を痛めつけることは、許しません!」


 怒りの言葉を発しながら、サピィが相手の武器を焼き払う。


 中の弾薬が弾け飛び、ハンターが重火器を手放した。

 新しく、背中のライフルを取り出す。


「させません!」


 サピィの破壊光線が、ハンターを武器ごと飲み込んだ。


 残るは二人である。しかし、二人はバイクに乗って逃亡し始めた。


 デッカーのドローンも追いつかない。


「お任せを」


 追いかけようとした俺の肩を、シーデーが掴んだ。


「【コマンド】は、こんな芸当も可能なのです」


 突如、シーデーがバイクのボディに変形した。


 いきなり始まったトランスフォームに、他のハンターたちも目を丸くしている。

 中にはフォート族の特徴を知っている人物もいて、解説をしていた。


「お前、バイクに変身できるのか?」

「長年の戦闘ですっかり身体がサビついておりましたが、先日のオーバーホールでようやく本来の性能を取り戻しました」


 ドローンやタイヤ付き戦車も、変形を開始した。

 サイドカーへと変わる。

 モジュールを買ったのは、このためだったのか。


「運転は誰がやるんだ?」

「わたしが。ランバートは、サイドカーの方で相手を射撃してください」


 サピィが、シーデーの肩パットを取り外す。これは、ヘルメットになっているらしい。


「あなたもこれを」


 同じ肩パットを、サピィは俺にもよこした。


「【マシンモード】のシーデーは、膨大なエネルギーを消費します。なので、わたしにしか扱えません」

「わかった」


 魔王の魔力量でなければ、まともに走ることもできないようだ。


「サイドカーには、立つこともできます。シーデーの魔力のおかげで、振り落とされることはありません。動きやすい方法でお願いします」


 サピィが、アクセルを吹かす。


「いつでも行ってくれ」

「参ります!」


 ボオン! と激しい音とともに、追跡が始まった。

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