クラスチェンジ

「あ、立ち止まってしまいましたね。どうどう」


 リスをなだめるため、王女が首をなでであげる。


「ひと休みしましょう。マモルくん、おなかすいちゃったみたいなので」


 ヒルデ王女は、シャーマンの職を得て間がない。召喚獣をまだ飼いならせていないのだろう。


「我も、賛成です。スキルについてじっくり考えたいので」


 テラス席を用意してもらい、各々注文をした。


 バカでかいリスが、ミックスナッツをかじる。

 俺たちの倍以上は貪っていた。


「いい買い物をしました。ありがとうございますヒルデ様」


 手持ちの武器をドローンや戦車に取り付けながら、シーデーはヒルデに感謝の言葉を述べる。


「とはいえ、【デッカー】などのハッキング職を選ぶ人は少ないですね」


「なぜだ?」

「ゲームを遊ぶために、選択する方は多いのです。臨場感を得られますから」


 いざ稼業となると、選択肢は大幅に狭まる。どうしても闇ギルドか、裏稼業へのカウンターになってしまう。


「お役所かハンターギルド、企業抱えになりますなぁ」


 シーデーも会話に混じった。


「お硬い職場だと、どうしても本人のモラルなどが問われるな」


 こんな時代のゲームプレイヤーとなると、社会からドロップ・アウトした人たちだ。怠け者は、誰もいらない。


「働けないデッカーだらけなのも、サドラーが貧乏呼ばわりされる一因です」


 発展し過ぎで、労働者があぶれているせいだという。


「それで、トウコはどの上位ジョブを取るか決めたか?」

「このまま行くと、【ミスティック・アデプト】だぞー」


 なるほど、【シャーマン】を取るのか。


 せっかくなので、俺たちもクラスに振るポイントを見直すことに。


 俺はメインクラスに【ウィザード】、サブクラス【シャドウブレイド】を足して【サムライ】となった。


 パーティで最もレベルが高いサピィは、クラスなど関係なく、【魔王】である。


 この世界での魔王は、会社で言えば「代表取締役社長」のようなものだ。各地域に魔王は存在している。


 サピィはこの世界で【社長】と【メイジ】を名乗っていた。攻撃特化なウィザードと違い、補助や回復も得意とする。さらに、魔族専用職の【マギ・マンサー】も加わった。これで三つ習得したことになる。


 フェリシアは【魔法騎士】と【僧侶】を合わせて、【女君主ローデス】だ。


 ウォーマシンのシーデーは、【アサルト】と【デッカー】を足す。これで上位クラス【コマンド】となった。


 トウコがなろうとしている【ミスティック・アデプト】は、属性攻撃ができる職だ。【モンク】と【シャーマン】の組み合わせで習得できる。


「召喚も可能だな」

「あたしも召喚がほしい。デカいオオカミとか乗りたい」


 たいてい自力でなんでもできる、ソロ向けのジョブだ。

 その分、戦局に対応する臨機応変さが必要である。

 立ち回りが大変なため、トウコは選択を避けると思っていた。


「なんで急に?」


 もっと【バトルマスター】などの、戦闘特化ジョブにいくと思ったが。


「お前らが魔女の家に言っている間、シーデーとクラスについて相談してたんだー」


 そこで、アデプトの種類を教わっそうだ。


「魔女のトレントを見てたら、あたしも召喚獣が欲しくなったんだぞー」


 ヒルデ王女のリスも、参考になったのだろう。


「手数を増やしたいなら、バトルマスターにも【分身】があるぞ」

「うーん、バトルマスターになると、次は【ニンジャ】だろー?」

「いいじゃないか」


 ニンジャは、クリティカルヒットで一撃死を多発する超戦闘職だ。

 武器に依存する要素も少ない。


「よくないっ。【サムライ】を取ったお前とキャラ属性がかぶるんだよーっ」


 たしかに相手の首をポーンとはねるイメージなんて、トウコにはないな。

 トウコはそこまで、血に飢えていない。

 

 他によるところもないのでギルドへ行くか。


 そう思っていた矢先だ。

 

 街から悲鳴が。


「武装したハンターが、暴れている!」

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