無人兵器

「なあランバート、シャーマンってなんだ?」

「森の精霊などとコンタクトを取る、魔法使いだな」


 攻撃もできるが、どちらかというと相手の弱点をつく方に向いている。


「そういえば、トウコもジョブチェンジのタイミングだな」


 トウコのレベルは、とっくにサブクラスを選べるほどに達していた。

 しかし、立て続けに忙しかったので先送りにしていたのである。

 トウコ自身も、迷っていた。


「歩いて街を楽しみながら、話そうか」


「だな!」と、トウコが歩いていたときである。


 突然、シーデーが足を止めた。


「気になるところがあったか?」

「いや、なに。この国には【無人兵器】が売っているのだなと思いましてな」


 無人兵器とは、攻撃性能を持った自立型兵器のことだ。

 愛玩動物並みの大きさだが、重火器を装備できる。

 ザコ殲滅には役立つはずだ。


「我なら、このトンボ型の偵察用ドローンにマシンガンを付けて、タイヤ付き戦車にハンドグレネードを装備させますな。ジュエルで強化すれば、さらなる戦果が期待できますぞ」


 ショーウィンドウに手を付き、シーデーは無人兵器を吟味している。

 まるでトランペットを欲しがる子どものようだ。

 シーデーに、こんな一面があったとは。


「魔界にも、無人兵器は多数ありました。まさか、人間の世界にも浸透していたとは」


 戦闘ドローンの豊富さには、サピィも舌を巻いていた。


 サドラー最大の特徴といえば、無人機を連れているハンターの多さだろう。

 通行人のほとんどが、浮遊型ドローンか、履帯つきの小型戦車を横に従えている。

 通常時は武器をしまっているが。


 ペールディネでは、見なかった光景だ。


「サピロス姫、【デッカー】という職が欲しいです。フェリシア嬢が加わって前衛が増えましたし、姫も【マギ・マンサー】の力を取り戻されました。我もお手伝いを」


 珍しく、シーデーが自己主張をした。


【デッカー】はデッキングという、『電子世界を行き来すること』が可能だ。さらにドローンを操ることにも長ける。コンピュータ世界に潜っている間、ドローンに攻撃を任せるのだ。


「このパーティに圧倒的に少ないスキルは、情報収集系です。姫様、あなたもそうお考えだったのでしょう?」

「そうですね」


 俺たちは、良くも悪くも少数精鋭である。

 目がたくさんあったほうがいい、と考えたらしい。


「なお、【アサルト】で得たポイントを割くことになりますから、我自身の戦力は落ちます。が、手数が増えて前衛により磨きがかかるでしょう。習得許可を」

「ありがとうシーデー。許可します。戦果を期待しますね」

「しかと働いてみせましょう」


 シーデーはラジコン戦車と、トンボ型のドローンを買う。どちらも四〇センチほどと大型だ。


「ポータルで移動できるっていい時代だなと思ってたが、こうやって街を歩くのもいいなー」

「うむ。それにしても、なんだかすごい光景だな」


 先頭には、私服姿とはいえ大型のリスにのったプリンセスを。

 ドローンを連れたロボットと、それを使役するスライム魔王だ。

 スライム魔王の後ろには、殴りウィザードとモンクである。


 周囲から、すごい注目を浴びていた。


「ポータルが故障なんてなあ」

「闇ギルドです! 彼らが、ポータルに悪さをしたんです!」 


 この一帯を荒らす闇のギルドが、ポータルの制御部分を破壊してしまったらしい。


「それも、私が遠征する直前を狙って!」

「ひどいヤツラだな!」と、トウコが憤慨した。


 機動馬車を使うことになったのはいい。もし、ヒルデが使った状態でポータルが壊れたら。想像もしたくないな。


「そのペットって名前はあるのかー?」

「マーモットのマモルくんです。マモルくん、よろしくおねがいしますね」


 ヒルデ王女が、マモルと名付けられたリスを撫でる。


 マモルが、フンスと鼻を鳴らす。


「こちらから先が、カジノやライブハウスです。ガラの悪い人たちは、ここを根城にしていますね」


 リスが、シャレたオープンカフェの前で止まった。

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