2-4 ブートレグを持ったハンターを、殴りに行きます

サドラー小国は、経済大国

「着いたぞ」


 サドラーの街が見えてくる。


「すごいな!」


 どこが小国なのだろう。まるで、リゾート地ではないか。

 港があり、オープンカフェでは上流階級の一団がくつろいでいる。

 荒廃した世界とは、逆の発展を遂げていた。


「私の知っているサドラーではないわね。もっと寂れていると思ったのだけれど」

「ペールディネと、いい勝負だな?」

「ホントよ。すごいわね」


 フェリシアも、驚いている。


 機動馬車を預けに、ハンターギルドへ顔を出す。


 ギルドも、小綺麗だった。まるで一流ホテルのロビーのようである。


「ランバート・ペイジ様がた。ようこそおいでくださいました。ペールディネから連絡は伺っておりますわ」


 金髪碧眼の姫君がテーブル席でお茶を飲んでいた。


「ヒルデ王女!」


 複数の護衛とギルドの職員を伴い、ヒルデ王女は俺たちを待ってくれていたのである。


「長旅は大変だったでしょう? すいません。今日中にポータルは修理できると思います。もう少々お待ちを」


 今日は果実の取引と、タウンポータルの最終調節で街へ降りていたという。


 ギルドの一部が、ポータルの工事で人が集まっていた。


「ポータルができるまで、お城でおくつろぎください。お食事をお持ちいたしますわ」

「そこまでしてもらうわけには」

「構いませんよ。みなさんはわたくしの命の恩人です。おもてなしをさせてくださいませ。父にも、話を通しておりますので」


 ヒルデ王女に招かれ、昼飯となった。


「ああ。よくおいでくださいました」


 清潔なスーツを来た男性が、食卓から立ち上がる。


 彼がサドラー王だと、ヒルデが教えてくれた。


 礼をしようとすると、王は着席を促す。


「かけたまえ。娘の恩人だ。固いあいさつは抜きにしようじゃないか」


 あっさりした性格のようである。


「遠慮なく召し上がって」

「では、いただこう」


 テーブルマナーなどロクに知らないが、誰からも咎められない。


 さすがに、フェリシアもサピィも心得ている。

 彼女たちを参考にすればいいか。


「ウフフ、お気になさらないで。ここでは謎マナーなんて言葉はありませんから」

「そういうなら」


 ヒルデからお許しが出たので、普通に食べることにした。

 作法を気にしないほうが、食事に集中できる。

 肉を甘酸っぱいソースで絡めるなんて、庶民派レストランでは思いつくまい。


 コナツの料理もいいが、たまにはこんな豪勢な食事もいいだろう。


「ところでヒルデ王女」

「ヒルデで結構ですわ、お姉さま」


 お姉さまだって?


「私は、あなたの血縁者ではないわ」

「でもそう呼ばせて、お姉さま。わたくし、運命を感じてしまいましたの!」


 あまりのヒルデのゴリ押しに、サドラー国王も眉をひそめるばかり。


「申し訳ありません、オフェーリア様。これは、あなたの妹になりたいとうるさくて」

「あはは……」


 まあ、ヒルデからすれば彼女は英雄だからな。


「話がそれましたね。ではヒルデ、サドラーは、妙に発展しているような気がするんだけれど?」

「はい。魔女様のポーションのおかげですわ、フェリシアお姉さま」


 やはり、ポーションを作る果物の恩恵を受けていたか。


「かつてサドラーは、エルトリやヒューコの庇護を受けてしか生きていけませんでした。が、今は時代も違います。こちらが夫を選ぶ立場になりました」


 サドラーは異様に発展し、もはや大国にとって変わる勢いになっていた。


「とはいえ、攻め込むつもりはございませんが」


 できるだけ、両国との関係は良好でありたいと、国王は思っているという。


「しかし、ヒューコもエルトリも、我が国をペールディネを攻める道具としか考えておらず」


 長年、エルトリとヒューコは、サドラーを挟んで対立していた。


 そこに魔女が介入し、立場を逆転させてしまう。


 経済大国として急成長したといえ、今でも盗賊たちからは「見た目が派手なハリボテの国家」か、「借金大国」と思われている。

 その方が、都合がいいからだ。


 おもしろくないのは、サドラーを挟んでいる両国である。

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