2-3 贋作の製造元を、殴りに行きます
サドラー王女の受難
俺たちパーティは、ヒルデ王女を無事に故郷のサドラー小国まで送り届けた。
昏倒させた盗賊団の残党は、ペールディネの兵士を呼んで連行してもらっている。
サドラーにも転送装置はあるのだが、壊れて使えなくなったという。
まったく、手間がかかる。
「ありがとうございました」
「礼には及ばない。ただの依頼だからな」
それでも、ヒルデは何度も頭を下げた。
「困ったことがあったら、なんでもお申し付けください。それと」
「なんだ?」
「もし、我々からも依頼があったら、引き受けてくださいますか?」
俺は振り返り、皆に意見を求める。
しかし、彼らの顔を見れば、聞くまでもなかった。
「もちろんだ。なんでも相談してくれ」
「ありがとう! あなた方がいてくれて、本当によかった」
王女の様子が、どうもおかしい。
普通、ハンターとは労働者に毛が生えた程度の地位しかない。
こんな下々のものにまで、すがろうとするなんて。
いったい、サドラーに何が起きているのか?
「ペールディネの騎士、フェリシア様。いずれまた」
「ええ。気をつけてください。王女」
フェリシアは、いつまでも王女を見守っていた。
「じゃあ、私たちも帰りましょうよ」
おおげさに、フェリシアが明るく振る舞う。
「そうですね。役目は果たしましたから」
帰りの機動馬車の、空気が重い。
フェリシアが王族らしいのだが、誰も聞き出せずにいた。
「それにして、ビックリだったぞ今の。急にフェリシアがフッと消えたぞ」
トウコが、フェリシアに話しかける。
こういうとき、空気を読まないヤツがいると頼もしい。
「襲撃のときのこと? あれは、【ソニックダッシュ】よ」
「魔法使いのスキルだな」
「私ね、魔女に育てられたの」
腰に下げた銃のホルスターを撫でながら、フェリシアは言う。
「魔女に拾われた当時のことは、何も覚えていないの」
赤ん坊の頃に、連れてこられたらしい。
どういう経緯で魔女に預けられたのかは、今の王のほうがよく知っているだろうと。
「サピィはどうして、私が王女だってわかったの?」
「ハンターギルドの態度です」
俺も、どうも妙に感じていた。
なぜかギルドの作業員たちが、フェリシアに対してよそよそしかったからだ。
「ペールディネに到着したら、王が話してくれるわ。詳しくね」
王都ペールディネへ戻り、王にサピィを紹介した。
「本日はお招き、ありがとうございます」
「いえ。悪いようにはいたしません。では、お話ください」
俺たちは、ペールディネ王へ報告をする。
一つは、ペールディネを襲った敵の手がかりを掴んだこと。
もう一つは、フェリシアの正体の確認だ。
「サドラーの王女様がさらわれたですって!?」
「安心してほしい。ヒルデ王女は俺たちが無事に送り届けた」
「そうですか。ありがとうございます」
ペールディネ王は、ホッと胸をなでおろす。
「また、あなた方に借りができましたね」
「別に大したことはしていない。ハンターとして当然のことをしたまでだ」
しかし、彼女の身辺については少し妙だった。
「ところで、ヒルデ王女はどうして護衛をハンターに任せたので?」
「それが……」
ヒルデ王女をどこへ嫁がせるかで、国王派と大臣派で衝突しているらしい。
大臣は、騎士たちを取りまとめている。
そのため、大臣が画策をするかもしれないと、うかつに騎士たちを出せない事態になっていた。
「その件に関しては、あちら側の問題なので、我々は手が出せません。静観するしか」
ペールディネの王子たちは、既に縁談がまとまっている。
そこにヒルデ王女の名はない。
「相談されたのですが、我々が介入しては、国際問題になりかねず」
「大変なのはわかった。とにかくあなたも狙われているのは事実だ。盗賊団の目的は、彼女ではなくオフェーリア王女だったから」
「オフェーリア。もう、その名を聴くことはないと思っていました」
王は、フェリシアを見つめる。
「彼女は私の、腹違いの妹です」
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