ペールディネの店舗

 商業ギルドによると、他の売り場との折り合いでここしかなかったとか。

 もうペールディネには、工房付きの鍛冶屋に空きがなかったのである。


「店を出せるのはいいが、武器を作成するスペースがねえんだ」


 コナツも、困り果てていた。

 かといって、工房を作るにも店舗が密集しすぎている。

 拡張工事さえできない。


「工房は引き続き、アイレーナにするか。販売員をこっちに置くよ」


 アイテムボックスを設置して、アイレーナで作った装備をこちらへ転送する仕組みにするようだ。


「それでもぜいたくだ。元々、期待していなかったからな」


 なにより、ペールディネに店を建てられたのは大きい。

 王都を拠点を置ければ、なおよかったんだが。


「ごめんなさい。こんなお店しか紹介できなくて」


 なぜか、フェリシアが詫びた。


「いいって。他の商人たちとの折り合いもあったんだろうさ。十分配慮してくれたよ」


 コナツは、気にしていない。頭をすぐに切り替えている。


「さて、とりあえずあんたの壊れた装備の代わりを見繕おう」


 フェリシアの装備一式と新武装の要望書を、コナツがアイテムボックスに入れた。


「あとは、転送されるのを待つだけだ」

「人間も入れる大きさね?」

「ヨロイを入れるからな。ただ、アクシデント防止の為、生き物が入ると作動しなくなっている。前にチビが入りかけて動作不良を起こしてな。ガハハ!」

「笑いごとじゃないでしょ!」

「まあ、ガキも無事で、すぐに調節したからもう安心だ。おし、来たぜ」


 すぐに、要望通りのアイテムが転送される。


 武器は、トパーズがセットされたロングソードだ。雷の属性を持つ。


 アーマーには、魔力の最大値が上がるサファイアと、状態異常を軽減するパールがはめられている。


「これはすごいわ。さっきの武装より、数倍優れているとわかるわね」


 装備しただけで、フェリシアはアイテムの威力を見定めたらしい。


「魔法剣士らしいからな。魔力の回復もするダイヤも使っているぜ」 

「ダイヤまで入っているなんて、豪華ね」


 ヒータシールドに埋め込まれたダイヤを見て、フェリシアは興奮している。


「貴金属としての価値はありません」


 サピィが言うと、フェリシアは首を振った。


「それでも、キレイよ。どうもありがとうコナツさん」

「あんた本来の武装も、タダで見直すぜ」

「そこまでしてくれるなら、私も努力するわ。店の発展のために」


 サピィが、「提案なんですが」と手を挙げる。


「わたしは、アイレーナの街を発展させたいです」


 コナツの家族がいるし、本来の拠点を拡張すればいいのでは、という。


「アイレーナの方が、店舗の空きが多いのです。わたしを迎え入れてくれた街が寂れていくのを見るのは、しのびなくて」

「それはいいな。どうだコナツ?」


 サピィから出資を受けているコナツは、サピィの意思を尊重するという。


「なるほどな、オレたちでアイレーナを立て直すってわけか。いいじゃん。あっちの方が、知り合いも多いしな」


 誰からも反対意見が出なかった。

 ペールディネでは販売に力を入れて、鍛冶屋の拡張はアイレーナ中心で始めることにする。



 続いて、ハンターギルドへ。


「ヴァイパー族の事件以降、モンスターに不穏な動きは見られないわ。ねえ、もっと規模の大きいダンジョンはないの? そしたら、異変の正体がわかるかもよ?」

「そう申されましても、ヴァイパー族が出ているってだけでも相当の収穫ですよ!」


 俺たちの敵ではないが、平均以下のハンターにとってヴァイパー族は脅威だ。


「言っておきますが、ヴァイパー族が拠点を構えているって相当やばいんですからね。数も今までとはケタ違いです」


 きっと、ペールディネ襲撃のどさくさに紛れたのだろうとのことだ。



「頼む! すぐにハンターを招集してくれ! バデム盗賊団が!」



 突然、ギルドに傷ついたハンターが飛び込んできた。

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