女騎士、仲間になる

「ご安心を。一〇〇%で断るわけじゃない。ただ、あなた方に我々が関わっていいのか不安なのだ。この装備の製造法が問題になるかも知れない」


 ひとまず、ワンクッション置くか。


「興味深いですね」


 俺が説明をすると、国王は身を乗り出してきた。 


「国王、その要求を受け入れる前提で、お話しておきたいことが」

「なんなりと」

「……ここではなんなので、できれば人払いを」


 副官などが見ている前で、話せる内容ではない。


「フェリシアは同行していても?」

「構わない。できれば国王だけにお話したいことだが、それくらいは」


 俺は、国王にできるだけ接近する。


 フェリシアは緊張しているが、俺は「攻撃の意思はない」と首を振った。


「実は、今回の一件には魔王が絡んでいる」


 ペールディネ王に、俺はサピィのことを話す。できるだけ好意的に。


「なんと」

「落涙公。魔王の中でも人と関わることが多かったと聞きます。並の魔族では敵わず、その地位を不動のものとしていたとか」


 フェリシアにまで、魔王落涙公の名は知れ渡っていた。


「ふうむ。それが、本格的に人類の味方をしたというのですね?」


 玉座に背を預けながら、国王はため息をつく。


「この武器も、彼女が協力してできあがったものだ。どうぞ」


 俺は、【ソード・レイ】を差し出す。


 おっかなびっくりで、国王はソード・レイに触れた。


「ご安心を。俺にしか扱えない」


 暴発の恐れもないと告げて、剣を返してもらう。


「兵舎まで行けば、訓練場もあります。そこへ参りましょう」


 訓練場で、武器の試し切りをすることに。


 相手は、武装カカシだ。

 普通のヨロイだが、お抱えのドワーフに作ってもらった特注品だという。


「おらあ!」


 最小限の力で、ソード・レイを振るった。


 サクッと、ヨロイは剣によって真っ二つに。


 休んでいた兵士が、何事かと訓練場まで来たくらいである。

 両断されたカカシとヨロイを見て、兵士たちは言葉をなくしていた。ため息しかできない。


「なるほど。魔族を退けたという話もうなずけますね」


 武器の切れ味に、王も満足げだ。


 トウコの武器もチェックし、試し切りは終了する。


「どうです、フェリシア?」


 国王はまず、現場の意見を聞いた。


「相手は魔族です。ワナという可能性も」


 それである。フェリシアの言う通り、信用してもらえないのが怖いのだ。サピィが批難されるのは、避けたい。


「とはいえ、王都を救った人物です。悪い人間ではないでしょう」

「陛下!」


 フェリシアが警戒するのも、わかる。

 ごく最近、魔族から襲撃を受けたのだ。

 そこで、魔王の力を借りましょうなんて、騎士として感情が許さないだろう。


「では、こうします。フェリシア、キミが仲間に加わりなさい」


「な、なんと!?」


 驚いたのは、フェリシアだけではない。俺もコナツもだ。


「陛下。この私が抜けては、誰が王の守護を?」

「何をおっしゃるか? キミの代わりなんて、いくらでもいますよ。キミは彼ら……というか、落涙公に対して懐疑的なんですよね?」

「そうなりますね」

「ならば、やることは一つです。キミがパーティに加わって、そのサピィ殿とやらを観察してらっしゃいな。彼女の動向を探ればよいのです。百聞は一見にしかずですよ」


 説得され、フェリシアは縮こまる。


「しかし、騎士がハンターとなるのは」

「君主の称号を与えます。それでいいですね?」


 なんと、王はフェリシアに「自治権」まで与えた。


 もはや、断れる気配ではない。


「世界を見てきなさい、フェリシア」

「は、はあ」

「騎士の一三番隊なんて、おまけで付いてきた役職なんですから」

「……そうですね。では改めて。フェリシアよ。今後ともヨロシクね」


 こうして、俺たちに仲間が増えたところで、謁見は終わった。


 それにしても気になったのは、王のフェリシアに対する態度である。


 まるで父親が娘を諭す言い方だったな。

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