王に謁見
「この度の働き、大義でした」
「もったいなきお言葉」
ペールディネの王都に招かれ、王に直接お礼を言われた。
俺も膝を折り、頭を下げている。コナツやトウコも同様だ。
ペールディネ王の間は、昔ながらの風景でありながら、ところどころに機械部品が仕込まれている。
監視カメラなどもありそうだ。
国王は中年の男性で、物腰も非常にやわらかい。
「あなた方がいなければ、この地は魔族に攻撃されて、多くの民の命が失われたことでしょう」
今回の戦闘で、ペールディネ国王は多くの秘宝を奪われた。
それよりも、民の命を最優先するとは。
「いえ。国王こそ甚大な被害を受けらたはず。特にアイテムなどは」
「たしかに、我らが騎士たちが集めてきたくれた貴重品です。しかし、民の命は何ものにも代えがたい」
王の言葉に、騎士たちも同意している様子だ。
「して褒美をと思ったのですが、これ、フェリシア」
国王は一人の女性騎士を呼び寄せる。
金髪を後ろにアップした、成人女性だ。
豪華な金属ヨロイに身を包んでいる。
「あ、盗賊団を壊滅させた人だ!」
トウコが立ち上がって、騎士を指差す。
「これ、おとなしくなさいな」と、コナツがトウコをたしなめる。
「ペールディネ騎士隊、一三番隊長のフェリシア・モーテンセンよ。よろしく」
フェリシアと名乗った女性が、俺たちに頭を下げてきた。
「ランバート・ペイジだ。よろしく頼む」
「勇者ランバート、今後はこのフェリシアに何でも言ってちょうだい」
そういい、フェリシアは握手を求める。
「それと、こちらが報酬よ」
言ってから、フェリシアが俺に麻の袋を渡す。
中は、多額の金貨だ。金塊すら入っている。
おそらく、ハンターなどしなくても一生遊んで暮らせるだろう。
しかし、俺もコナツも受け取らなかった。
「王様、物はいらねえです。それより、こちらでの経営許可ってのは、もらえませんかね?」
「構いません。適切な場所を提供しましょう。無償で結構です」
店の規模や条件などは、可能な限り融通するという。それはありがたい。
だが、なおもフェリシアは、報酬額を減らしてよこしてくる。
「だから、いらないと」
「活動資金よ。受け取りなさい」
「ありがとう」
報酬額は減った。
が、イチからペールディネで経営を始めるよりずっと安上がりである。
「ただ、条件を飲んでいただきたいのです」
「なんでしょう?」
不利な要求でも、受けるしかないだろう。
断ったなら、どうなることか。
しかし、サピィを差し出せというなら、俺だってことを構える次第だ。
「このアイテムだが、我々ペールディネでも扱えないでしょうか?」
「フィーンドジュエルを用いたレアアイテムを、差し出せと?」
「そうです」
どうする? たしかに、ジュエルを使った武装は魅力的だろう。
しかし、製造法が特殊なのだ。
ヘタに扱えば、サピィに危害が及ぶ……。
「言われると思ったぜ」
コナツが、卑屈な笑みを浮かべた。
「お前自身はどうなんだ、コナツ?」
「戦争の道具にするってんなら、ゴメンだね。魔物退治や、攻撃しないで国防のみなら、考えなくもない」
コナツの言うとおりだ。
これらの武器は、弱いハンターのために作った。
国力を増強するために作ったわけじゃない。
しかし、これらの武装が国を守った。それも、また事実だ。
独占は今後、許されないだろう。
どこまで許容するか。
「もちろん、戦争に役立てようなどとは思いません。自衛目的です。そうはいっても、攻撃してきた国に反撃するなら用いることを、ご勘弁願えませんか?」
「ま、まあ、そういうことでさぁ。ワガママでもうしわけないっすね。へへ」
敵意はないことを、コナツは不器用ながらアピールする。
レアアイテムだって、戦争の道具には使われているんだ。
俺たちの作るジュエル装備だって、有事の際は仕方なく使用されるだろう。
特別扱いはできない、というわけだ。
「して、いかがでしょう?」
「それが実は、俺達の一存では決められない」
煮え切らない俺の態度によって、王の間に緊張が走った。
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