1-7 殴りウィザード、かつての友を探します(第一部 完 

友の影

「ピンチって、子守りかよ!」


 避難所へ入った途端、トウコからチビどもの面倒を押し付けられた。みんな、家族とはぐれた子どもたちだ。


「あたしは治癒魔法があるんだ。お前は高度な治療魔法なんて使えないだろ?」

「サピィは手伝ってくれるか?」

「はい。おまかせを」


 サピィは連れて行くのか。


「俺はどうすれば?」


 子どもの面倒なんて、したことないぞ。


「お前のナビで、チビたちの親を探してやってくれよなー」

「なるほど。わかった」


 俺は、【ファミリア】を呼び出して、迷子になった子どもたちの親を探す。


「ガキどもに近い生体反応を探せ」


 幸いにも、ファミリアは俺の支持に従ってくれた。


 避難所に、数名見つかる。


 ガレキの中からも、数名救出した。おかげで、全員が親と生きて再会している。ケガがひどいものもいたが、俺の魔法で癒せるレベルだった。


「ありがとー」


 子どもたちから、お礼を言われる。


「あ、いや」


 親が見つかったなら、もう俺の出る幕じゃない。さっさと引っ込む。


 あんな大事件の直後だというのに、コナツたちが危険を顧みず配給しに来た。


「よーし。たんと食えよ」


 奥さんと鍋を作り、コナツは避難民に配給作業を行う。野菜たっぷりのシチューとパンで、被災者の腹を満たしてあげていた。


 トウコは、被害にあった子どもたちの面倒を見始めた。ケガを見て、話し相手になって。


「おう。ランバート。無事だったか」


 コナツが、俺に声をかけてきた。


「ああ。ご覧の有様だが」


 ようやく、自分も相当の重症だと気づく。フィーンド・ジュエルの恩恵が間に合わないほど、消耗していた。また、空腹はジュエルではどうにもならない。


「腹が減ってるなら、食えよ」

「俺はいい。被災者に」

「お前が一番、ダメージがでかいんだ。食えって」


 コナツが、俺にムリヤリお椀を持たせた。


「ああ。いただくよ」


 岩場を椅子代わりに、ドシン、と腰を下ろす。

 もう、立てないほどか。

 自分に治癒魔法を浴びせつつ、シチューを口につける。

 舌や唇がわずかに切れていた。

 意識していないところを、負傷していたことに気づく。

 シチューで腹を満たし、俺は息を整えた。


「聞いたか、ランバート? ペールディネ王都に、山程のデーモン・ロードが押し寄せてきたらしい」

「な……行かないと」

「待てよ。話はそれからだ」


 立ち上がろうとした俺を、コナツが押さえつける。


「デーモン・ロードが、どうしたってんだ?」

「たった一人のハンターが、一瞬で全部蹴散らしちまったらしいんだ」


 信じられない。デーモンの最高位を? 


「どんなやつだ。サピィのような、同じデーモン種族か?」


 コナツは首を振った。


「人間だとよ」

「まさか! そんなことができるやつなんて、俺は知らない」

「いや、お前のよく知っている人物だったってよ」

「なんだって?」


 俺が知る人物……まさか、クリムが?


「レジェンダリクラスの魔銃をぶっ放して、一撃で急所を撃ち抜いたそうだ」


 間違いない。そいつは、クリム以外にあり得なかった。


「そうか。クリムが」

「かもな。目撃情報からして、クリムで確定だろう」

「しかし、どうして俺たちのところに顔を出さないんだ?」


 さすがに、コナツもそこまではわからないらしい。


「さあな。あいつにも事情があるんだろう。俺たちに会えないほどの理由が」

「ペールディネの近衛兵ってわけじゃないんだよな?」

「ああ。王さんから勲章をやりたいってお触れが出たらしいが、行方不明になったらしい」

 

 俺たちが話し合っていると、グレースが現れた。


「無事だったか」

「うん。トウコちゃんがずっとつきっきりだったから。あの、ありがとう」

「トウコに感謝だな」

「それで、ちょっと話があるの。主人のことで」



 グレースの夫は、とある人物と会うため、牢獄にいるという。

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