デーニッツ襲来

 散骨のデーニッツが、姿を現す。


「さ、散骨の、デーニッツだと!」「なんでこんな場所に?」


 彼の評判を知っているのか、ハンターたちも硬直してしまう。


「怯むなハンター共! くらえ!」


 ペールディネの騎士が複数名、デーニッツに斬りかかった。


 対するデーニッツは、背負っている幅広い鉄塊をゆっくりと持ち上げる。グレートソード【チョウシュー】だ。


「そんなトロくさい動きで我らを――」


 剣がデーニッツに届く前に、騎士の上半身は粉々に。


 横薙ぎ一つで、デーニッツはペールディネ騎士団を肉片へと変えてしまった。


「相手は飛び道具を持たぬ! 魔法で応戦するのだ!」


 宮廷魔術師たちが、炎や氷の矢を放つ。


 腰に下げた曲刀【ムトー】を逆手に持って、魔法を打ち返した。


 その後もデーニッツは、チョウシューを力任せに何度も振り回す。まるで、子どもが木の棒で雑草でも払うかのように。


 それだけで、多数の騎士たちが半減していく。


「平和ボケした王宮騎士団などに、我は討てぬよ」


 精鋭ぞろいのはずの騎士団を、デーニッツはまったく相手にしない。


「さてさて、ペールディネ出身のハンターは、実力者揃いと聞く。その力量、いかほどかな?」


 ドクロの口から、デーニッツが蒸気のような息を吐く。


「なめるなよ、若いの!」


 先に動いたのは、ドワーフの老ウォーリアであった。身の丈を越えたハンマーを振りかぶり、跳ぶ。


「ヨロイごと砕いてくれるわい!」


 降下しながら、ハンマーをデーニッツに振り下ろす。


 デーニッツも、チョウシューで防ぐ。


「なるほど。レアアイテムか。アイテムに頼らぬ戦法。相当の達人とお見受けするが?」


 打ち合いしながら、老ウォーリアがデーニッツの力を称賛した。


 しかし、当のデーニッツはウォーリアにまるで関心を示さない。相手を完全に、格下と見ていた。


「無視か。それもよかろう。だが、こちらの装備は武器もヨロイもレジェンダリクラスぞ。お主がいくら強かろうが、力量差は覆せまい!」


 ウォーリアが、デーニッツに渾身の一撃を繰り出す。


 デーニッツは攻撃を、片手で軽々と受け止めた。


 必殺のハンマーを、ウォーリアは何度もドクロの剣士へ打ち込んだ。脳天へ、腕へ、背中へ。


 それらすべての打撃を、デーニッツはチョウシューだけで防ぐ。退屈しているのだと、こちらにまで伝わってくる。


 呼吸が乱れてきたウォーリアに対し、デーニッツは息切れ一つしていない。


「気は済んだかのう?」


 まるで遊んでやるとばかりに、老ドワーフを挑発する。


「くっ、若造がベテランぶりおって!」


 再度、ウォーリアはハンマーを打ち込む。


「ふん!」


 デーニッツが、順手に持ったグレートソードを振り下ろした。先に攻撃したドワーフより早く。


 ドワーフを、ハンマーごと一刀両断してしまう。


 勢いのままに、チョウシューは大地をも切り裂いた。


「ヌハハ! もろい! もっと歯ごたえのあるハンターはおらんのか!」


 チョウシューを担ぎ、デーニッツは辺りを見回す。


「バカな! 防御力が振り切れているドワーフ装備を真っ二つに!」

「レジェンダリを、力だけで切り裂いた!」

「マジかよ、バケもんだ!」


 ハンターたちは、すっかり怖気づいてしまう。


「ドワーフが強いなど、いつの時代の話をしているか?」


 デーニッツにとって、ベテランだろうと若手だろうと実力は関係ないらしい。


「何が、レジェンダリか。装備に頼って己を鍛えぬから、レアごときに敗れるのだ」


 つまらなそうに、デーニッツは真っ二つになったドワーフを蹴り飛ばす。


「へっ、何をビビってんだか」


 パーカーを着た雷使いが、インプたちを消し炭にしながら現れた。


「要は、コイツより早けりゃいいんだ。先手必勝?」

「よく来た若人よ。この【チョーシュー】と【ムトー】のサビにしてくれる!」


 グレートソードの血を払い、デーニッツが構える。

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