1-6 最強の敵を、殴りに行きます

ペールディネ襲撃を阻止せよ

 ペールディネのポータルから街に出ると、凄まじい光景が広がっていた。


 インプの群れが、人々を襲っている。殴る蹴る、街を壊すといった程度だが、被害は甚大である。弱い魔族だが、いかんせん数が多い。


「うわ、すごいことになっているぞ!」


 トウコが見ているのは、味方側だ。


「ぬううりゃああ!」


 老ドワーフのウォーリアが、廃墟の鉄骨を引っこ抜いて振り回している。


 ソードマンや騎士、サムライと違い、ウォーリアタイプの戦士職は使用武器を問わない。


 年老いたドワーフの足元には、彼が使い潰したであろう斧や鎚が散乱していた。


 インプが集合体となり、レッサーデーモンへと変化する。


「しゃらくさいわい!」


 デーモンの横っ面を、ドワーフ戦士は鉄骨で殴り飛ばす。


 しかし、鉄骨の方が砕けてしまう。


 デーモンというと、顔に僅かな傷を負っただけ。それも、すぐに再生する。


「ならば!」


 背中のウォーハンマーを、老ドワーフはフルスイングした。


 ハンマーの効果か、レッサーデーモンが光の粒子となって砕け散る。


 鉄骨すら意に介さないドワーフの顔面を消し飛ばすとは、相当なレアアイテムに違いない。


 他にも、盾と剣を持った女戦士がインプを斬り、細身の騎士が槍でインプたちを複数串刺しにした。


「ザコには用事がねえんだよぉ! 【ライトニング】!」


 パーカーを着たエルフの少年が、雷撃を呼んでインプをまとめて消滅させた。


 随分と若いが、彼も俺と同じウィザードのようだ。雷のスキルだけで言えば、俺を超えるだろう。雷に特化しているのか。


 さすがペールディネ出身だけあって、歴戦のハンターばかりだ。

 並のハンターが苦戦するレッサーデーモンさえ、寄せ付けない。


 また、戦っているだけではなかった。

 攻撃班と治癒班、避難誘導に分かれて戦力を選り分けている。

 即席の連携なのに。


 俺も、協力せねば。


 新武器【ソード・レイ】を試してみるか。どういう攻撃ができるのかわからないし。


 鞘には、フィーンド・ジュエルが大量についた輪っか状の装飾が付いている。刃の出る方へ装飾を動かすと、ジュエルに見合った攻撃ができるのだ。


「トパーズ!」


 装飾をスライドさせ、トパーズにセットした。


「オラオラ!」


【ディメンション・セイバー】を連続で撃ちまくる。


 雷の光を帯びた衝撃波が、軌道を変えた。


 避難民には絶対に当たらない。


 使い手が敵と認識したものだけ、攻撃する。

 これは便利すぎるぞ。


「早く逃げろ! ええい、邪魔するんじゃないオラァ!」


 レッサーデーモンを攻撃をしつつ、避難民たちを誘導する。


「おうテメエ、ウワサのランバート・ペイジじゃねえか」

「俺を知っているのか?」

「この界隈で、テメエの名を知らねえやつはいねえよ」


 そこまで、名が知れ渡っているのか。


「足引っ張るんじゃねえぞ!」

「若造が粋がるでない!」

「るっせえやジジイ!」


 老ドワーフと若いエルフが、悪態をつきながらも共闘する。 


「トウコ、シーデー、ザコを頼む」

「ほいきたチェストォ!」


 さっそくバトルスタッフを振り回し、トウコがインプを蹴散らす。


 細腕から繰り出される一撃とはいえ、攻撃力アップの赤いジュエル効果が絶大だ。

 相手がか弱い女と見て油断したインプが、すごい勢いで吹っ飛んだ。


「チェスト! もいっちょチェスト!」


 逃げ遅れている人たちを優先的に守りつつ、トウコはインプの群れを撃退していった。


 サピィの【マジック・ミサイル】も同様に、敵だけを攻撃している。


 ギルドやハンターたちが足止めしてくれているおかげで、犠牲者は出ていないようだ。


 住民の避難も続いているが、人数が多すぎて遅々として進んでいない。


「ランバート! なにか、様子が変です。ザコは王宮に集中しているのですが、王宮に入ろうとはしていません」


 サピィが、端末で敵の動向を探っている。

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