親バカのドワーフ

「最初は、我が娘に」


 ヘビの革で作った貫頭衣だ。大胆なスリットが入って、露出は増えた。が、見た目とは裏腹に驚異的な防御力を誇る。

 肩にはパフスリーブもあって、色気の中に少女っぽさも残っていた。


「ピンクかー。もっと格闘家っぽい、黒とか赤とかがよかったぞ」


 貫頭衣の色がかわいすぎて、トウコは文句を言う。


「黙ってろ。お前には一〇〇年早え」


「ちぇー」と、トウコが口を尖らせる。


「あんたの少女趣味が、全開だね」

「うるせえやいっ! 娘を愛さねえオヤジはいねえんだよ!」


 コナツ夫妻が、娘そっちのけでじゃれ合う。どうもコナツは、娘への溺愛度合いをこじらせてしまったらしい。


 何よりすごいのは、ヘビ革のアームガードとニーソックスである。

 薄皮ながら、ジュエルの影響でプロテクターよりも強度が高い。これなら、重いプロテクターで全身を固めなくて済む。


「あと、武器だ。両端を、球状にしてある。インパクトの瞬間に炎のエンチャントで爆風を飛ばすんだ。ただし爆風だけな。これで、移動もできる」


 高くジャンプしたければ、スタッフに足を載せてわざと床に叩き込めばいいらしい。


 早速テストすると、トウコの軽さもあって高く飛びすぎた。


「アームガードとシューズ、バトルスタッフには、各属性効果を持たせている。敵に応じてどのような属性にも対応できるから、思い切りぶん殴れ」

「ありがとう父ちゃん! でもまた予算度外視して」

「バカヤロウ。お前らどんだけジャージャー・デビルを狩り続けたって思ってやがる? 有り余るくらいだったぜ」


 素材が大量に残ってしまい、在庫処分の方が大変だったらしい。


 トウコの戦闘スタイルが、ようやく確立し始める。やはり、武器の方をサブに持っていったほうがいいだろうという結論に。



 シーデーには、火炎放射器とライフルを一体化する特殊なアタッチメントが。

 アーマーも一新し、盾役としてますます頼りになる存在に。


 なんといっても、全身オーバーホールしたのが強い。


 オーバーホールとは、すべてのパーツを部品単位で元から新調することである。

 おそらく、シーデーのメンテナンスが一番凝っていた。


「壁役としても、火力としても、お役に立ちましょうぞ」


 当のシーデーもやる気だ。


 さて、俺の装備である。アラクネとの戦闘で得たショートソードは、どうなったのか。


 しかし、俺の予想は裏切られることになる。


「これ、刃が付いてないぞ。どういうことなんだ?」


 正確には、刃が折れていた。斜めに切れている。


「完成が、間に合わなかったのか?」

「いんや。こいつは【ソード・レイ】といってな。いわゆる光子剣だ」


 ソード・レイだって?


「見た目や感覚は、片手剣だな。しかし、持ち手が長いから両手剣か?」

「ハンド・アンド・ハーフソードだ。片手でも両手でも扱える」


 イクリプスに比べると、サイズがやや小さい。もっとゴツい武器を渡してくると思っていたから、意外だった。


「お前の魔力を流し込むことによって、刀身が出るんだよ」


 半信半疑で、俺は剣に魔力を注ぐ。


 ブオン! と風を切る音が響き、黄色い刀身が飛び出た。


「おお、すごい勢いで刃が飛び出てきた」


 突然の出来事だったので、一瞬腰が引ける。


「昔は、こういった武器があちこちで散見されたのですが、懐かしいですな」


 シーデーが、過去を振り返るように語った。


「ああ。旧世代の武器だぜ。レアリティは、アーティファクト並だろう。オレも、こんなの作ったのは初めてだぜ」


 聖遺物レベルの、代物か。


 光子でできた刀身を安定させる技術が、失われてしまった。なので、今ではすっかり見なくなったという。


「威力は保証する。ディメンション・セイバーだって撃てるぜ。もっとすげえのは、『どんな属性にも変換できる』ことだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る