機動術士 マンティダエ

「なんですかな、あなた方は?」


 テン・リューの隣に、異様な気配があると気づく。


「お前は……」



 ヨロイの隣に立っていたのは、ジェンマととともに失踪した魔術師だった。


「たしか、女シーフの仲間だったフォート族だな?」


 俺の言葉など無視して、魔術師はサピィの方を向く。


「ジェンマ様への手土産として、このヨロイを調査してみたら、我々の邪魔をしていたのはあなただったのですね、サピロス・フォザーギル殿下」


 このフォート族は、サピィの本名を知っていた。


「あなたは、ジェンマと繋がっているのですね」



「自己紹介がまだでしたね。お初にお目にかかります。我が名はマンティダエ。ジェンマ・ダミアーニ殿下のしもべ」


 マンティダエと名乗った怪人が、腰を折る。


「世界中の【オミナス】を集める務めをしていましたら、必ずお会いできると思っておりました」



「……このデーモンたちは、テン・リューを探していたんですね!」


 そうか。この世界は、レアアイテムからのマナを補給している。それは、魔族も同じなのだろう。


「テン・リューから無限に発せられるエネルギーを吸えば、彼らはこの世界で自在に暴れられます。魔法の岩の力がなくても」


 ジェンマはヨロイがありそうなダンジョンの当たりをつけて、魔法の岩を埋めてデーモンに探させていた、というわけか。


「山のようなデーモンの死体は、なんだ?」

「ヨロイに食わせたのでしょう」

「今にも動き出しそうだな」

「実際に動きます。あれは、リビングアーマーですから! 来ます!」


 サピィの言う通り、ヨロイがひとりでに動き出した。


「さっそくですが、あなたがたには死んでいただきます」


 マンティダエとかいうフォート族が、生きたヨロイに杖の先を当てる。


「さあ、復活なさいデーモンたちよ」


 フォート族が、杖を掲げた。


 仮初の命を吹き込まれて、レッサーデーモンたちが目を覚ます。その眼はうつろだ。


 このフォート族、ネクロマンサーか。


「来るぞ、おらあ!」


 イクリプスを振り回し、ディメンション・セイバーで切り刻む。


 だが、倒しても倒しても、また再生してしまう。


「キリがないぞ!」

「テン・リューのせいです!」


 ヨロイから、何かが黒いモヤが溢れている。モヤを吸った魔物たちが、アンデッドとなって襲ってくるようだ。


「あれを壊せば、魔物たちは消えるんだな?」

「おそらくは。ですが、外に出してはなりません」


 ヨロイを操っているだろうマンティダエに向けて、ディメンション・セイバーを叩き込む。

 だが、テン・リューに片手で阻まれてしまった。


「なにい!?」

「ムダですよ。あなた方ではワタシを倒せない! 行きなさい!」

 

 マンティダエが、せっかく身につけたヨロイをあっさり脱ぎ捨てた。


 空になったにもかかわらず、ヨロイが俺たちに向かって走り出す。

 しかし、俺たちなど眼中にないらしい。跳躍からのとんぼ返りで、俺たちを飛び越えようとする。


「おらあ!」


 俺は、テン・リューの脇腹を切り裂く。


 だが、ヨロイに対したダメージは入らなかったようだ。


 リビングアーマーが、俺たちの前から姿を消す。方角からして、ペールディネの街へ向かっているようだ。


「あれはようやく見つけた、ジェンマ様への手土産! 取り逃すわけには行かないのです!」

「後を追うのです、シーデー」


 ヨロイをシーデーに追わせて、サピィ、トウコ、俺でマンティダエを取り囲む。


「承知!」


 シーデーが、俺たちの脇をすり抜けてヨロイを追跡に向かった。


 レッサーデーモンが、シーデーの行く手を遮る。


 だが、シーデーはレッサーなどものともしない。指マシンガンで一掃する。


「残るはお前だけだぞ、マンティダエ」

「なんとも、往生際の悪い」



 やけに余裕ぶって、マンティダエが大げさにため息をつく。

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