雷を鍛えしもの
「こっちは、ギルドからもだってさ」と、女ドワーフが言う。
さらに価値の高い、プラチナ製の硬貨が渡される。
「こちらからもありがとう、ランバート。世話になったわ」
「また何かあったら、飛んでくるよ」
ワーキャットと女ドワーフも、受付嬢と帰っていく。
いくらなんでも、多すぎる。返そうとしたが、二人は足早に去ってしまった。
工房に戻って、コナツに金を見せる。
「こんな大金、受け取れない」
仲間を集めてパーティを立て直すため、この金は彼女たちにこそ必要だ。
「受け取ってやってくれ。あの嬢ちゃんたち、死んだ仲間のレアアイテムまで売って、金に変えていたぜ」
二人はコナツの店に来て、仲間の死体から外したアイテムを売りに来たという。
「俺たちの行動は、そこまでしてもらうほどの働きだったのか?」
「お前に、それだけ感謝しているんだ。こいつは、もらっておきな」
コナツは言うが、使いみちが限られている。アイテム生成を依頼するしか。ならば。
「……じゃあ、この金で強力なアイテムを作ってくれないか?」
俺は全額、コナツに金を渡す。
「そうですね。私も、これだけ強いジュエルを製造できるようになりました。お願いします」
サピィも、スフィアサイズのジュエルを大量にコナツへと提供した。
「おいおい、いいのかランバート? とんっでもねえ武器ができるぜ」
そういいつつ、コナツは喜びを隠しきれていない。武者震いを始めている。
「次の相手はおそらく、散骨のデーニッツだ。どのみちこの先、それくらいじゃないと戦えない」
「よっしゃ。腕が鳴るな。お前ら!」
弟子たちを呼び出し、コナツが指示を飛ばした。
工房に整列し、弟子らはコナツの指示を待つ。
「店はお前らが管理しろ。その間、オレは工房にこもってアイテム作成に勤しむ。いいか、手を出すんじゃねえぞ!」
「へい!」と、弟子たちが返す。
「ソケットの空け方は、覚えたな?」
「へい!」
大声で、弟子は答える。
「んじゃ、業務はいつもどおりやれ。解散!」
弟子たちが作業するのを見送って、コナツは工房へと向かった。
「……てなわけで、オレは今から設計図を書く。当分、用事があったら弟子に言ってくれ」
「といいが、コナツ。どうする気だ? 第一、俺があのクモ女から手に入れた武器なんて、片手剣だったぞ」
それも、儀式用の攻撃力が低いものだ。とても実戦で役に立つとは。
「上等だ。とびっきりのアイテムをイメージできたんだ」
やけに自信満々に、コナツは答える。
「どんなイメージだ?」
「お前があのワータイガーと戦ったって話を聞いてな、アイデアがビリビリーッて湧いてきた。なんだろうな、製造の神が降りてきたーっ! て感じだ」
両手をワナワナさせて、コナツが天を仰ぐ。
「そうか。では頼んだぞ」
「OK。あとは全部、オレに任せな」
ひとまず、コナツの言葉を信じることに。
「待った! サピィちゃん!」
コナツが、サピィを呼び止める。
「例のブツは、翌日に届くそうだ」
「承知しました。お手間をおかけします。コナツさん!」
サピィが、コナツに頭を下げた。
「何かしているのか?」
「コナツさんに、ペールディネからこちらにお取り寄せしていただいたんです。予算ギリギリでしたが」
相当高価な買い物だったのだろうか。
「それは、サピィの個人的な買い物か?」
「まあ、そうなりますね」
「まさか、あのコスプレ衣装とか?」
「とんでもありません!」
顔を真っ赤にして、サピィは反論した。
「今は戦闘が始まる時期です。そんな買い物なんて! あれだけの衣装は、個人のお財布でも痛手です。もうちょっと儲けてからですね」
「だよな。疑って悪かった」
「いえ。そのときになればお見せしますので、ご安心を」
「わかった」
説明の限り、戦闘に関わる大事な書類だとか。
「あんたたち、泥だらけじゃないか。お風呂沸いてるから、入っちゃいな」
コナツの妻に無理やり手を引かれ、俺たちは大浴場へ。鍛冶屋が身体の汚れを落とすために作られた、風呂場だ。
「え、ちょっと待ってくださいおかみさん。まさか」
「みんなで入るに、決まってるじゃないか」
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