闇ハンターの目的

「頭部をモンスターに寄生されたのかも知れませんね。そういう魔物なのかも」


 術士の脳を食らうモンスターが、この世界にいるらしい。


「そいつがやられた経緯を知っているか?」

「あたしたちが、セグメントセブンに入ったときだそうよ」


 女シーフは途中で離脱したので、あとはファイターが引き継ぐ。 


「アタイたちの役割は、セグメント・セブンの調査依頼だったわ」


 途中、乱入者が現れたらしい。その男は、突然ファイターの仲間に切りかかったという。


「あっという間に、仲間は細切れにされたよ」


 マッケランも、頭部だけ残して殺されたらしい。


「やったのは、どんなヤツだ?」

「デーニッツよ。【散骨】のデーニッツ」


 散骨というのは、デーニッツの二つ名だ。

 ミキサーのように回転しながら相手を骨ごと切り刻む「旋風斬」の様子が、散骨をしているように見えるからと名付けられた。


「ふたりともいいか? デーニッツという輩だが、何か石か岩のような物体を小脇に抱えていなかったか?」

「ああ。何かをダンジョンに埋め込んでいたね」


 今度は、ドワーフの女ファイターが語りだす。


「そうでした、ランバートさん。ようやく、岩の解析が終わりました。結果、コカトリスから採取される希少な毒液がインクに使用されていました」


 凶鳥コカトリスの猛毒は、魔族にとって熟成されたワインに等しい。極上の味を求めて、魔族が喚び出されたのではという。


 コカトリスと聞いて、森で大量にコカトリスを切り刻んでいた闇ハンターの名を思い出す。一連の事件に、デーニッツが関わっているってわけか。


「あの魔法の岩がどんな目的で設置されたか、判明したか?」

「魔物を凶暴化して、街を襲わせるためでしょうね」

「ハンターが、自分たちの拠点を潰すようなマネなどするのか?」

「依頼の一つでは、あったのでしょうね」


 デーニッツ個人の目的ではないと。 


 ハンターの壊滅を、目論んでの犯行だ。犯人が魔族なら、考えうる。


「気をつけなよ、ランバート。デーニッツは強いやつだとわかったら、躊躇なく襲ってくる」

「ああ。今後は用心しよう」


 あのデーニッツも、この件に絡んでいるのか。


「デーニッツと戦闘になりかけたと、以前おっしゃっていましたね? アラクネ・クイーンと組んでいたのですか?」


 サピィの質問に、ファイターはうなずく。


「多分な。でも、協力している雰囲気ではなかったね」


 デーニッツは、魔族とつながりがあるという。だが、魔族の意思を無視して独自で行動する変人だとか。


「よくいえば自由人、悪く言えば身勝手よ」

「ヤツも依頼を受けていたらしいけど、ケンカ目的みたいだった」


 腕の立つパーティとの戦闘を優先させたのでは、のこと。


 唯一、女ファイターが生き残った。男はみんな、アラクネに食われていたらしい。


「アラクネクイーンは、男性を捕食することで繁殖するのです」


 セグメント攻略で大量の小グモが死んでいたが、あれはクイーンの子だろう。


「女がキライなのか?」

「いいえ。ヤツは女を嗜好品として食べます。好物なので、最後に取っておいたのではないでしょうか?」


 アラクネの性癖を聞いて、女戦士が「やめとくれよ」と身震いする。


「ヤツらの、デーニッツたちの目的は?」

「モンスターの大量発生だ。この世界を魔物で埋め尽くすってよ」


 その魔の手は、このアイレーナにも及んでいると。


「ジュエルアイテムを売ってよかったですね」

「だな。俺たちだけでは止められなかった」


 装備にジュエルをつけて販売したおかげで、モンスターの増殖は防がれている。


「ギルドでも何か判明したら、報告致します。調査隊の救援、ありがとうございました」


 話し合いの後、キンバリーは頭を下げた。


 散骨のデーニッツならびに、ジェンマというサムライの手配書を作った。


「全員を助け出せなくてすまない」

「いいって。ありがとうよ。ランバート」


 帰宅時、女ドワーフが報酬の残りを現物で渡してくる。大量の金貨だ。

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