第13話 前略、道の上より-13

           *


 ただひたすら南進を続ける二人だった。途中のコンビニでミネラルウォーターとパンを買い込んで、それをかじりながら前へ進んだ。もう3時間になろうとしている。二六号線も終わる。もうすぐ湾岸線だ。直樹はイチローにペースを合わせているように思える。どこか余力があるように見える。イチローはそれが気に掛かったが、いつか立場は逆転してみせると思いながら淡々と走った。

 海の香りがかすかに漂っている。




 由起子が職員室から戻ってくると、全員の目が集まっていることに少し怯んでしまった。特に、しのぶは泣きそう瞳で、じっと由起子を見ていた。由起子はにっこり微笑みながら、答えた。

「電話があったわ、警察から」

えぇ、という声が上がった。しかし、由起子はそれを制するように軽く手で合図すると、続けた。

「心配ないわ。たいしたことじゃないから。あたしの知り合いが警察にいて、その人があちこちに聞いてくれたんだけど、それらしい男の子二人が、泉津のあたりを通ったっていうことよ」

「泉津?だいぶ向こうだよ」

「でも、方角はあってるわ。南の方ね」

「それって、どのあたりです?」

「二六号線の歩道を走っていた二人の男の子がいた、っていうことだけよ。まだイチロー君と直樹君だって決まった訳じゃないわ」

「マラソン…かな?」

「そうね。割と平和的な勝負よね」

「ありうる!」

「あたし、ちょっと帰って車取ってくるわ」

「あたしも行きます」

しのぶは立ち上がった。

「慌てないで。まだ、そうと決まった訳じゃないわ。一応車の用意をしておくだけよ。中川君、とりあえずあたしが戻ってくるまで情報の方、よろしくね」

「はいよ」


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