第4話 前略、道の上より-4
「まったく、あいつ、何様のつもりなのよ」
「まだ、言ってるの」
公園のグラウンドで練習している愛球会の面々の中で、しのぶは未来と組んで柔軟トレーニングをしていた。
「だって、あたしを見つけると、とにかく因縁をつけてくるのよ」
「そんな風に見えないけど」
「本当よ。前だって、試合の挑戦のときもそうだったし、その前も」
「気になるんじゃないの、しのぶちゃんのこと」
「え?」
「本当は、イチロー君、しのぶちゃんのこと好きなんだったりして」
「ま、まさか」
「しのぶちゃんも、可愛いから」
「そ、そんなこと、絶対ない。あたしなんか…」
「そんなことないよ。可愛いよ」
「ミキちゃん、そんな…」
「はは、喜んでる、喜んでる」
「あ、からかったなぁ」
しのぶは柔軟をやめて未来に殴りかかった。未来は、笑いながらそれを交わしていた。と、不意に未来を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、ミキちゃん」
二人が振り返ると、そこに直樹が近づいてきていた。直樹は練習着の格好だった。
「あら、直樹さん。練習中?」
「まぁね。ロードワーク中。ミキちゃんも?」
「そう。今日は、学校使えないから、みんなとここで練習」
「大変だな」
直樹が見回すと、周りで練習していた連中に緊張が走った。あの憧れの直樹さんだ、という想いがみんなの体を堅くした。
「こないだの試合で野球部より強いことがわかったんだから、強いもん勝ちでグラウンド使わせてもらえばいいのに」
「そんな訳にいかないわよ。あたしたちは、ただの同好会。あっちは、本職のクラブ」
「でも、弱っちいじゃん」
「まぁね。あたしたちにかかったら、まぁ、あんなもんよ」
「言うねぇ」
「へへ」
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