第35夜 ペット (約1000字)

変な夢を見た。


  ワン。ワン・・・ワオン・・・ワン・・・アオン・・・。

  ・・・。

  ・・・。


 (私は、首をかしげながら、翻訳機のスイッチを確認する。【OFF】のままだ。

  あわてて、スイッチを【ON】にする。)


  失礼・・・翻訳機が・・・【OFF】のままだった。


  どうやら、私は、犬らしい・・・。

  それとも、犬型の宇宙人なのだろうか?

  よくわからないが、とりあえず、この翻訳機を介して、話を続けよう。

  

  私は、散歩をしていた。

  不思議なことに、私は、二本脚で歩いていた。

  まるで、人間のように。


 「ねえ、こっちで遊ぼうよ。」

  突然の声にびっくりし、私は、声の方を見やった。


  なぜ・・・今まで、気づかなかったのだろう?

  私の手には、リードが握られていた。

  そして、その先には・・・なんと、一人の人間が四つん這いで歩いている。

  その人間は、小学生くらいの女の子だった。

  断っておくが、ちゃんと服を着ている。私の夢は、倫理的なのだ。


  女の子は、私を公園の中に引きずり込もうとする。

  しょうがないな・・・と、つきあってやることにした。

  

  公園の広場に着くと、私の手には、なぜか、ボールが握られていた。

 「おかしなこともあるもんだ」と思い、なんとなく、ボールを投げる。


  すると、女の子が全力で、ボールを追いかけていく・・・。

  女の子は、ボールに追いつくと、それを両手で持ち、二本足でかけ戻ってくる。

  ボールを地面に置くと、再び、四つん這いになり、こちらの方を見上げている。

  

  えぇと、こういう時は、頭をなでるんだっけ・・・?

  

  私は、女の子の頭を、いっぱい、なでてやった。

  女の子は、きゃっ、きゃっと喜んだあと、

 「また、ボールを投げてよ。今度は、もっと、遠くに!」と、言う。


  私は、ボールを遠くに投げる。

  と同時に、女の子は、全力で追いかけていく・・・。

 

  はあぁ、何が楽しいのやら、私には、ちっとも、わからん・・・。


  そう思っていると、遠くから、誰かの声が聞こえてくる・・・。

 

 「ゴハンだよッ!」


  ゴハン・・・その言葉を聞くなり、突然、おなかが減り始めた。

  ああ・・・そうだ・・・。

  今日は、まだ、ゴハン食べてないなあ。

  

  また、誰かの声が聞こえてくる・・・。

 

そこで目が覚めた。



「おいでぇッ! ゴハンだよぉ!」


私は、寝ぼけまなこで、声の方を見やる。

夢に出てきた女の子が、私のゴハンを準備し、ニコニコしながら、待っている。


「ワンッ!」


私は、うれしさのあまり、ひとこえ返事をすると、しっぽを振り振り、ご主人さまのもとへと駆けよった。

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