第28夜 リサイクル (約1400字)

変な夢を見た。


  わたしは、ある部屋の中にいた。ここでは、以前、テレビを見た記憶がある。

 (第14夜 「Q」参照。)


  わたしは、テレビの前に座り、リモコンに手を伸ばし、テレビの電源を入れる。

  テレビ画面には、以前と同様、ドキュメンタリー番組が映し出された。

 

 ・・・・

  

 (工場のような場所が映し出される。ごみを粉砕している様子が、映し出され

 る。そして、ごみが、別の製品へと生まれ変わっていくイメージ映像が流れる。)


 (『XX年後の地球 ~リサイクルはいま~』のタイトルが表示される。)


 (ナレーション)

  青い地球・・・私たちは、この素晴らしい環境を守るため、リサイクル技術を

 進化させてきました。そして、現在では、ほぼ90%のリサイクルが可能になりま 

 した。ごみによる環境問題は、ほぼ、解決したといえます。


  しかし、別の問題が発生しました。そう、地球人口の減少です。

  

 (ここで、画面が切り替わり、人口推移のグラフが表示される。過去の人口に

  比べ、現在の人口が50%以下になっていることがわかる。)


 (ナレーション)

  人類は、ごみ問題は、解決したものの、人口減少の問題については、うまい解決

 方法が見出せませんでした。少子化による人口減少が解決できなかったのです。

  先進国のみならず、発展途上国においても、少子化が進み、現状のような人口推

 移となってしまいました。


 (ここで、画面が切り替わり、労働人口推移のグラフが表示される。労働人口も急

  激に減っているのがわかる。)


 (ナレーション)

  労働人口確保のため、A国の政府は、極秘裏にある研究を行っていました。

  そして、その研究は成功し、現在、リサイクルに活用されています。


 (画面が、工場の画面に切り替わる。

  吊るされた人間のようなものが、レールで運ばれて、ある機械装置に放り込まれ

  る。その機械の出口から、人間のようなものが、バラバラと吐き出される。

  吐き出された人間のようなものは、ゆっくり立ち上がると、緩慢な動きで歩き始

  める。)


 (ナレーション)

  死体のリサイクルです。今まで、死体は埋葬されてきました。

  A国の研究により、死体に特殊加工を施し、完全な労働力として、再構築する

 技術が開発されたのです。

  この技術を使い、A国は、死体のリサイクルに着手しました。

  当初、倫理的な反対の声は上がりましたが、危機的な労働不足と思いがけない成

 果により、いつのまにか、反対の声は、なくなりました。

  今では、A国は、この技術を他国へと輸出しています・・・。


 (画面が、農園に切り替わる。

  緩慢な動きをした者たちが、農作業をしている。

  農作業をしている集団に、トラクターが突っ込み、次と次といていく。

  

  画面が、工場に切り替わる。

  緩慢な動きをした者たちが、機械を組み立てている。

  その中の一人が、機械装置に巻き込まれ、ジタバタとしている。


  画面が、精肉工場に切り替わる。

  緩慢な動きをした者たちが、肉を切り出している。

  その中の一人が、肉を切り出した後、手をあげる。手首から先がない。

  一緒に切り落としてしまったのだろう・・。


  画面が、どんどん、切り替わり、リサイクルされた死体が、緩慢に作業し、何

 かしらのアクシデントに遭遇しているシーンが、ずっと映し出される。)


 (ナレーション)

  私たち、人類は、死さえも・・・リサイクルに成功しました。

  次は、いったい、何をリサイクルするのでしょうか・・・?


そこで目が覚めた。

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