第21夜 帰還 (約850字)

変な夢を見た。


  私は、宇宙をさまよっていた。

  あの時、船外活動中の事故により、どこかに吹き飛ばされてから・・・。

    

  今、自分が、どのようになっているか、まったくわからない。

  私の頭は、動かない。

  ただ、バイザーをとおして、目の前の黒い空間を見つめるだけ。

  星々が流れ去ることで、まっすぐ、自分がどこかへと流れているのがわかる。


 「ああ・・・地球に・・・帰りたい。

  あの、青くて美しい星を・・・もう一度、この目で見たい・・・。」

  唇を動かそうとしたが、動かなかった・・・。

  

  私は、今、どうなっているのか?

  考えることは・・・できる。見ることは・・・できる。

  話すことは・・・できない。動くことは・・・できない。

  まあ、話すことも、動くことも、できたところで、何も意味をなさないのだが。


  ・・・・

  

  漂い始めてから、どれくらい経ったか、わからない。

  だが、なんとなく、見覚えのあるものが目に入った。

  私は、信じられなかった・・・。


  月だ・・・!。

  幻影ではない、確かに月だ・・・!。

  その証拠に、青い惑星も目に入る。


  ああ・・・地球。

  我が心の・・・地球。


  私は、帰ってきた。

  今、私がどんな状態にあるかはわからない。

  だが、私は、地球に帰ってきたのだ。

    

  ・・・・


  この時、地球では、パニックが起きていた。

  突然、月のそばに超巨大隕石が、出現したのである。

  

  それは、どんどん近づいてくる。

  これが、地球に衝突したら、間違いなく、地球は滅亡するだろう・・・。


  ・・・・


  私は、唇が動かないことを忘れていたが、つぶやく。

 「ああ、地球。最期に見れてよかった・・・。」

 

 「ああ、私は帰る。今、ようやく帰る。

  大気圏でこの身が燃え尽きようとも、魂は・・・地球に帰る。」

 

  ・・・・


  彼は、まだ、気づいていなかった・・・。

  彼が漂っている間に、彼の体に無数の塵がへばりついていったことを。

  そして、いまや、超巨大隕石と化していることを・・・。


  彼の頭がついた超巨大隕石だるまは、心の故郷ふるさと『地球』に向かって、

 ゆっくりと降下していく。


 『彼は・・・長い長い旅路を経て・・・ついに・・・のだ!』


そこで目が覚めた。

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