第20夜 ライトノベル (約1850字)

変な夢を見た。


  ここは、どこだろう。どこにいるか、まったくわからない。

  本棚が目の前にある。どんな本が並んでいるか、ちょっと見てみる。

  見た目から、ライトノベルばかりのように思える。


  私は、その中から、なんとなく一冊を取り出してみた。

  

  タイトルは、


 『ライトノベルを手にして開いてみたら、ライトノベルの世界に引きずり込まれ  

  て、なぜか、俺のスキルレベルMaxだったから、のんびり無双しつつ、100話目

  で、壮絶な最後を迎えることにしました!』


  というものだった。


  やけに長いタイトルだな。老眼には、ちょっと厳しい文字の細かさだ。

  口元に笑みを浮かべながら、そう考える。

  そして、1ページ目を開く・・・。


 ・・・・

  

  まじかよっ! 俺は、驚いた。ここは、どこだ! いままで、部屋の中で、本を

 手にしていたはずのに、その本は、手の中からなくなり、わけがわからないこと 

 に、俺の頭上には青空が広がっている。


  おい・・・おい・・・。こいつが、異世界転移ってやつか?

  つうことは、俺・・・ラノベの世界に引きずりこまれたってこと?

  へへ・・・ラッキー。俺、無双確定じゃん! いいね、いいね!

  そろそろ、ヒロイン登場の時間だし。

  まあ、適当に時間つぶしますかッ!


 ・・・・ 中略 ・・・・


  ヒロインと合流した俺は、ラブコメとギャグを織り交ぜつつ、仲間を増やし、世

 界中を旅する。旅と言っても、俺にはファストトラベルのスキルがある。知らない

 ところにもひとっ飛びさ。え? つまらない・・・。そんなもんだろっ!

  俺は、こうやって旅をしながら、この世界の設定を読者様に教えてあげてるの  

 さ。長々した旅を描くよりも、えいっと飛んだほうが、簡潔でいいだろっ!


 ・・・・ 中略 ・・・・


  驚いたぜ! 我ながら・・・。俺、ほんとにツえぇェ! 一発でドラゴン倒しち

 まった。さすがに、ドラゴンの爪で胸を貫かれたときは、死んだと思ったさ。

  でも、俺、不死らしい・・・。自分でも気持ち悪いけど・・・。

  なんか、選ばれた人間らしいぜ。

  ヒロインが、複雑そうな顔してたけど、俺、嫌われちゃったかな・・・。


 ・・・・ 中略 ・・・・


  大変なことになった・・・。どうやら、平和の時代が終わっちまったらしい。

  しかも、原因が俺だとは・・・。なんてこった。俺が、このラノベの世界に引

 きずり込まれたとき、俺は、二つに分かれたらしい。うーん、よくわからんが。

  俺は、『まとも』なほうで、もう片方は『悪い』ほうらしい。

  悪い俺が、まんまだけど、悪の軍団を結成して、世界を滅ぼそうとしているん

 だと・・・。めんどくさいね。悪のほうの俺。ぶっ飛ばしてやりたいよ。

  ほんとに・・・。


 ・・・・ 中略 ・・・・


  ついに、最後の決戦だ。俺たちは、悪の俺を倒すための聖剣を手に入れる冒険に

 出ていたんだ。試練は無事のりこえ、俺は、聖剣を手に入れた。

  だが、失った代償も大きかったよ。俺の恋のライバルが二人も死んじまった。

  喜んでいいのか、悪いのか、複雑な気分だね・・・。

  まあ、今晩は、ヒロインとしっぽり過ごすさ・・・。

  明日・・・死ぬんだからな・・・。


 ・・・・ 中略 ・・・・


  悪の俺が言う。

 「貴様、生き残りたくないか? 俺とお前が一つになれば、俺たちは、お互い死

 なずに、この世界を支配できるぞ!」

  

 「えっ? ほんとう? ぼく・・・死にたくなかったんだ!

  なろう、一緒に・・・!」


  悪の俺は、笑いながら近づく。

 「まず、貴様の動き、止めさせてもらうぞ。」


  しまった! 体が動かない。このままでは・・・。


  悪の俺が、俺の頭を片手でわしづかみにする。

  すごい力だ! このままじゃ、頭が吹き飛んじまう。 


 「フッフッフ・・・。もはや、抵抗できまい・・・。」悪の俺が言う。


  へっ・・・。 馬鹿なやつ。さすがは、悪の俺だぜ!

  俺は、笑いだす。悪の俺のことを全力で笑う。


 「ハッハッハッハ! 悪いな! 悪ちゃん! お前のこと、騙しちまった!

  俺たちは、表裏一体。

  どちらか、片っぽが死ぬだけじゃ、ダメなんだよ・・・。」


  俺は、ヒロインの姿を探す・・・。どこにいるのか、わからなかったが、

 とりあえず、いそうな方向に目を向け、心の中で「サヨナラ」とつぶやく。


 「さあ、一緒に死のうぜ! 悪ちゃん!」


  俺の念動で、聖剣が、悪の俺と・・・俺の体を貫く。


 「これでいいんだ! これで・・・。俺、超かっこよかったよな・・・。」


  そして・・・。


  ・・・・

  ・・・・

  ・・・・


幸運なことに、翌日、不審に思った会社の同僚が、私の部屋を訪ね、横たわる私を見つけてくれた。


私は、笑みを浮かべながら、〇〇〇いた。


☆ ○の中に好きな言葉を入れてくれよな! 特に文字制限はないぜっ!

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