第10夜 スキップ (約600字)

変な夢を見た。


  私の目の前に、女が立っていた。

  女の名前は、九麗寺くれいじ 菜音なのん

  彼女は、なぜか、もじもじしていた。何か、私に伝えたいようだが・・・。


 「ああ、もうっ! ダメッ! わたし、頭がおかしくなりそうよ!」


  そう言うと、突然、彼女は、スキップを始めた。

  その動きは、とても褒められたものでない。

  まるで、ロボットが歩いているような動き。ギクシャクしすぎ。

  まったく、軽やかさを感じない。


  私は、見るに耐えかねた。もう、いい加減にしてほしい・・・。

 

  だから、私は菜音に言った。


 「ひどい動きだなぁ・・・。

  ・・・

  ・・・

  ・・・

  ボクのほうが、もっと上手にできるぜ!」


  私は、立ち上がると、スキップを始めた。


 「あらぁあらァ・・・。あなた、ひどいわね。わたしのほうが、上手よ!」


 「いやあ、ボクのほうが上手さ!」


  二人は、いつのまにか手を取り、部屋の中をグルグルとスキップして回る。

 

 「アハハハ、アハハハ・・・。」


  ただ、スキップをしているだけ・・・。

  何が楽しいのか、まったく理解できない。

  だが、私は・・・幸せだった。

  いつまでも・・・。

  いつまでも・・・。

  こうしていたい・・・と、私は願うのだった。


そこで目が覚めた。


私は、目が覚めてしまったことを残念に思っていた。

あの・・・スキップ。

菜音と手を取り合って、繰り返したスキップ。

私にとっては、幸せの時間だった。


「楽しかったな・・・。」


私は、そうつぶやくと、頭だけ動かし、今では動かない首から下を見やった。

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