第146話 【#親子対談】リアルママはガチでやべえ奴だった⁉ 【萌黄あかつき/虹】
『みなさん、ご紹介にあずかりました、リアルママの小百合です。あっ、ママといっても、とっても若いですからね。見た目は20代ですので、実質10代と呼ばれるまである。クーパー靱帯もがんばってるから、美巨乳も垂れてないし。AVでも熟女枠じゃないから』
:大丈夫か、こいつw
:あかつき以上の逸材
:ヤバさ的にゼッタイにVTuberやってるやろ
:ってか、言い方的にAV出たことある系ママ?
『このドピュドピュ、大量に流れるの、なにかしら?』
(ドピュドピュ? 大量?)
自由にさせておいたら、大変なことになる。
「小百合さん、それ、コメントです。配信を見ている人たちがコメントを書けるんですよ」
『あら、みなさん、ドピュドピュと白いものを中に出してくれるのね?』
:白いものって、ウルチャじゃない背景白のコメントかな?
:だとしたら、言い方が天才すぐる
:ボケなのか、狙ってエロいのか、🤔
「ちょっと、お母さん。1万人もの人が見ているのに、恥ずかしいこと言わないで」
詩楽が抗議するも。
『あら、1万人に視姦されてるの。なら、実質1万人と同時にセクロスしてるのと同じね。今までの最高が4Pだったから、一挙に記録を更新だわ。ギネスもらえんじゃね』
:1万人と同時セクロスの発想が斬新すぐるw
:暴走っぷりが完全にVのノリや
:おれ、今、童貞喪失中なの⁉
:あてぃくしは処女喪失中⁉
「はにーちゃん、あたし、後悔してる」
「あかつきさん、ごめんね。企画の立案者だけど、なんと謝ったらいいか」
僕たちの気苦労も知らずに。
『さあ、みなさん。イキましょう! 1万人同時に発射して、世界に革命を起こすのです❣️』
:世界に革命w
:エロ系魔法少女ものにジャンル変わったの?
「正義の魔法少女として、あなたが作ろうとしている未来は認められないわ」
『来たわね。小癪な魔法少女め』
詩楽がコメントをうまく拾ったおかげで、一方的に滅茶苦茶される展開から流れが変わった。
「あなたは情欲まみれで、あたしという子どもを認めていない」
『肉欲の何が悪いの? このまえも言ったけど、セックスという神聖な行為があって、あんたは生まれてきたの。肉欲の世界を否定する、正義の魔法使いさん?』
「くっ」
『あなたの正義は、正義の自慰。私の生き方に対して、自己満足でケチをつけないでくれるかしら』
「自己満足? あたしはねえ、あなたに育てられた覚えがないの。あたしが自己肯定感が低いのも、あんたのせい」
すると、電話口の向こうで小百合さんが爆笑する。
『そんなの自己責任よ。あなたがメンタル弱いのは、あなたのせい。なんでもかんでも、親の責任にしないで』
「そのセリフはまともな親になってから言って」
親子喧嘩が始まった。
収拾がつかなくなりそう。
「おふたりとも、いったん落ち着きましょう」
リスナーさんは訳がわからないと思うので、僕が説明しよう。
「じつは、配信外でも論争してたんです。小百合さん、『性は生につながる』とおっしゃっていて、エロスを全面的に肯定しました。それに対して、あかつきさんが反発しているのが、今のトークバトルです」
僕は審判兼実況なので、なにげに忙しい。
『さすが、ダーリン。冷静に物事を捉えている。あぁ、快楽堕ちさせたくなるわ』
「はにーちゃんに手を出させないから!」
詩楽が両手を広げた。
体が動くぐらい、ムキになっている。
「あかつきさん、はにーは誘惑に負けないよ」
「さすが、はにーちゃん。誘惑魔法への抵抗が高いのね」
『あら、誘惑だなんて、あんまりだわ。男と遊ぶのは、イキる活力なの。母親にひどいわね』
「こんなときばっかり母親づらしないで。ロクに子育てもせずに、男ばかりだったのに」
また、話がそこになった。詩楽にとって、大事なことなのだから。
『それのなにが悪いの?』
母親の答えも同じだ。
堂々巡りになりそうなので、僕が助け舟を出そう。
「そんなの当たり前じゃないですか。子どもはひとりでは生きていけない。なら、親が面倒みないとダメですよね」
『ふーん、ダーリン。それって、誰が決めたの?』
「当たり前ですよね?」
『当たり前って、なに?』
「常識です」
『常識って、あなたにとっての常識であって、私にとっての常識じゃないわ』
「……」
『たとえば、あなたは裸で外を歩かないのが当たり前かもしれないけど、世界を見渡せば裸族もいる。あなたは裸族を差別するの?』
「詭弁です。意味のないたとえ話はよくないですよ」
向こうのロジックに引き込まれないように注意しないと。
「ここは日本です。育児放棄は、児童虐待防止法違反や保護責任者遺棄罪に問われるケースもあるようですよ」
『それが?』
さすがに、絶句した。
『私は娘の件で警察に逮捕されたことないんだから、問題はない』
あまりに堂々すぎて、自分の感覚がおかしくなってくる。
犯罪がバレてなかったり、捜査中だったりで、捕まってないだけの人もいるだろう。小百合さんの論理では、そういう人も問題ないことになってしまう。
違和感しかない。
:こいつはヤバい
:さすがに引くわ~
:Vだったら契約解除されるやな
:あかつき、よく闇堕ちしなかったな
最初は強烈なキャラが受けていた小百合さんだったが、さすがに風向きが変わってきた。
小百合さんの自分勝手なロジックもあるが、僕たちのリスナーは若い人が多い。子ども側の立場で考える人たちにとって、身勝手な親は最悪な存在だ。
不公平な気はするが、世論を味方につけるのも作戦のうちだった。
『私も悪魔じゃないわ。子どもに愛情が持てるなら、放置なんかしないわ』
電話口の向こうからため息の音が聞こえる。
さすがの小百合さんも分が悪いと悟ったのだろう。
『でもね、あなたを見てると……私、つらくなるの。私、数百人の男と寝てきたけど、本気で愛したのは、あなたの父親だけ。なのに、愛人止まりだったし、フラれちゃったし』
声に寂しさがにじんでいた。
以前から僕が小百合さんに感じていたことだ。
破天荒な言動にばかり意識が向くが、喜怒哀楽は僕たちと同じ人間だ。失恋のつらさには共感できる。
わかり合える道があればいいんだが。
「小百合さん、あなたがあかつきさんのお父さんに捨てられたこと。気の毒だと思います。はにーも、あかつきさんにフラれたら、どうなるかわかりませんし。でもね……」
詩楽の母親を傷つけないよう言葉を選ぶ。
「あなたは自分の想いが叶えられなかった悔しさを娘にぶつけてるだけ。娘を逆恨みしちゃいけない」
ずっと言いたかった言葉をぶつける。
:はにー、かっこいい
:はにー、主人公属性なんじゃ
:ハーレム王になれるね!
『仕方ないじゃない!』
小百合さんが叫んだ。
『だって、他に生き方を知らないんだから』
「「えっ?」」
『私だって、娘を愛したいと思ったことぐらいあるわよ。最愛の人との間に生まれた子どもなんですもの』
「「……」」
『でも、無理なの。愛そうとすると、胸が苦しくなって、どうしていいかわからなくなるんだから』
その言葉に僕は悟った。
詩楽の母親は不器用な人なんだ。娘と同じように。
男との情欲に真剣で。
周りが引くぐらい行動して。
でも、本当の望みが叶わなくて。
苦しかった心が歪んでしまい、問題行動を始めた。
行為は許せなくても、心情は理解できる。
なんとかしたい。
「わかりました。はにーがどうにかします。娘さんを愛せるようにしますから」
僕は1万人の前で啖呵を切った。
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