第105話 【#あかつきチーム】企画が決まらなかったら罰ゲーム【花蜜はにー/虹】

「みなさん、こんばんは。レインボウコネクト・アークの花蜜かみつはにーです。今日は、文化祭の企画会議をしますね」


 文化祭の告知から2日後。

 僕のチャンネルにて、あかつきチームは公開企画会議を始めた。


『魔法少女萌黄あかつき。いざ参上!』


 チームリーダーのあかつきさんが挨拶をする。


『あたしは魔法少女だけど、あかつき建設の社長もしてるよ。美少女社長が天下トーイツしちゃうぞ☆』


 詩楽が社長になった姿を想像してしまった。

 お姉さんの理事長譲りの能力を発揮すれば、天下トーイツできる?

 メンタルの心配はあるけれど。


『あかつき先輩……天下のブラック経営者なんじゃないの』


 すかさず突っ込みを入れたのは、ゆっぴー・神宮寺。結城柚である。


『ちょっとぉ、ゆっぴー。あたしがブラックだったら、世の中すべてブラック企業じゃん⁉』

『あかつき先輩、髪が白くて、腹が黒いからね』


:コラボ解禁したばかりの新人が大物すぎる


『ゆっぴーさん、あかつき先輩に失礼ですよ』


 ゆっぴーさんをたしなめたのは、神崎さんが演じる七瀬キララだ。


:キララはアイドルアニメでいうとストイックなキャラだよな

:最初は脳天気主人公にキレてて、途中でデレる奴か

:主人公は誰?

:はにーしか勝たん

:よせ、あかつきと三角関係になる


 コメントがちがう方向に盛り上がってきた。

 僕はリスナーさんと適度に交流したあと、話を進める。


「今日は、あかつきチームの出し物を決める企画会議をします」

『えぇー、つまんない』

『ゆっぴー、おしおきしちゃうぞ☆』


 詩楽は隣の部屋で配信しているので、顔色がわからない。笑いながら怒ってるから大丈夫だと思うが。


「ゆっぴーさん、やる気ないのはいいけど、1時間で決まらなかったら罰ゲームあるよ」

『罰ゲームですか? 昆虫を食べるとか、熱湯風呂に水着で入るとかですか?』

「キララさん。バラエティ番組に出るアイドルじゃないんだから」

『あたし的に罰ゲームといえば、鍋。ヤバい食材が入った闇鍋よ』

「あかつきさん、あのときは地獄だったよね」


 僕は2回も食べたし。


「あらためて、ルール説明。制限時間は1時間で、文化祭の企画を決めます。1時間経っても決まっていなかったら、くじを引きます。くじで当たった人に罰ゲームをしてもらいます。内容もくじに書いてあるから、よろしくね」

『おっ、くじなんだぁ。なら、罰ゲーム回避できるじゃん。ゲームでもすっか』

「ゆっぴーさん、サボりは即罰ゲームだから」

『うげぇぇぇ』


 僕が宣告する。結城さんが苦い顔をする光景が目に浮かんだ。


「じゃあ、さっそく。いまから1時間です」


 僕は配信画面に設置したタイマーを操作する。残り時間が減り始めた。


『じゃあ、ここからは社長のあたしが仕切る』


 あかつきさんが仕切り始めるのは、事前の打ち合わせどおり。

 あんまり早く決まっても盛り上がらない。うまく協力して進めよう。


『まずは、ひとりずつ案を出して。はにーちゃんから』

「はにー的には演劇がいいなぁ。女子だけでやる『ロミオとジュリエット』とか。歌劇団っぽいし」

『文化祭の定番だねぇ。あたしはジュリエットやりたいかな。もちろん、ロミオははにーちゃんしか勝たん』

『おい、そこのふたり。いちいちイチャつくな』


:後輩にブレーキをかけられる先輩とは

:障害を乗り越えてこそ百合は輝く!


『つぎは、ゆっぴー』

『なにもしない。以上』


:堂々と言いやがった

:放送できなくなるじゃん


『ゆっぴー、24時間勉強の罰ゲームでいいかな?』

『24時間ゲームの罰ゲームね。ご褒美すぎる』

『ゲームなんて言ってないし!』


:あかつきをムキにさせる後輩

:漫才乙 ¥1000


『とりあえず、ナマケモノは放っておくよ。キララは?』

『わたしはそうですね……アイドルの聖地を考察した展示でしょうか』


(展示系の企画は地味だけど、アイドルだからギリでオッケーなのかな?)


 マニアックすぎると思ったけれど、アイデア出しで大事なのは否定しないこと。

 微妙に間があく。あかつきさんが困ってるかもしれない。


「キララさん。ホントにアイドル好きなんだね」


 僕は言葉を選んだ。


『じゃあ、最後はあたし。文化祭といえば、メイド喫茶でしょ。魔法少女のコスプレで』

「はにーはかわいい服を着たいけど、あかつきさんは普段の衣装じゃない」

『働いたら負け。労働系はありえない』


 結城さんらしい発言が出た後。


『喫茶店ですか。飲食には許可が必要と聞きますし』

『キララ、マイクラに保健所はないから!』


 神崎さんのボケに結城さんが突っ込むという珍しい流れになった。


『メイド喫茶するにしても、配信でどうやるの?』

「来客の他の虹メンに飲食系のアイテムを渡すのかな。たまたま来た虹メンと雑談する感じ」

『凸待ち雑談っぽいね』


 あかつきさんがしゅんとする。


 いちおう全員の案が出たけれど、いまいち盛り上がらない。

 時間もたっぷり残っている。


「あかつきさん、他の案を出し合うのはどうかな?」

『りょ』


 と思っていたのが、間違っていた。


『焼きリンゴ屋』『プラネタリウム』『遊園地のコーヒーカップ』『占い』『輪投げ』『お化け屋敷』『軽音楽のライブ』『たこ焼き屋』『釣りゲー』『お渡し会』『握手会』『魔法射的屋』『蟻を眺める』が追加の案だった。


『あたしは魔法射的屋。魔法をぶっ放して、景品をゲットしてもらおう!』

『ゆっぴーは断固、蟻を眺める。心を無にして楽しもう』

『わたしはお渡し会です。ファンとの交流を大事にしたいです』


 女子3人が自己主張するなか、僕は聞き役に回る。

 が、意見が割れたまま、制御できず――。


「みんな、あと1分だよ」

『うーん、これ、まとめるの無理でしょ』

『多数決をしようにも、票が割れてますしね』

『もう罰ゲームでいいじゃん』


 無情にも、時間が来てしまい、罰ゲームと相成った。

 ネットでできるあみだくじを引いた結果。


『罰ゲームははにーちゃん』

「うぅぅっ」


 不運だ。


『では、はにーちゃん、罰ゲームです。何歳まで、オネショしてましたか?』

「8歳です」

『……8歳なんだぁ。はにーちゃん、かわいいね』


 推しの言葉が胸をえぐる。からかうつもりがないとわかっているのが、かえってつらい。


『でも、はにーちゃんのおしっこは蜂蜜の可能性まである』


 羞恥プレイなんですけど。

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