第51話 【誕生日配信】なにが出るかな?【鍋パ】【花蜜はにー/虹】後編
闇鍋チャレンジの2人目はプリムラ先輩になった。
「オレ様、今日はハッスルしちゃるぜ」
:プリおじ乙
:今日のセクハラ被害者は誰だ?
プリムラ先輩が取ったものは、シメジだった。
大根に続き、鍋の定番食材。
しかし、色が赤紫。怖い。
例によって、僕は写真を配信画面に映す。
プリムラ先輩はシメジを箸でつかむと。
「オレ、はにーのキノコをペロペロしたくて、たまらん」
ナチュラルにセクハラをしてきた。
:ふたなりに目覚めたか?
:キノコあっても女子なら許す
:はにーは概念が女子
:はにーが攻めで、プリムラ受けは斬新
僕が男だと知らないリスナーさんたちは妄想を膨らませたようだ。
プリムラ先輩はシメジを咀嚼してから呑み込む。
「おっ、なんじゃ、こりゃぁ。下半身がムズムズするんじゃ。精力剤じゃねぇかよ⁉」
「あっ、アモーレが入れたんだぁ。みんなで愛を育むためにねぇ」
:さすが、愛の伝道師アモーレ、ヤバい
:性欲が強いの、いつもだろ?
放送禁止用語が飛び出さないか、僕とあかつきさんがガクガクブルブルするなか。
「アモーレ的には、パワーアップしたおじさんを屈服するプレイもありかなぁ」
諸悪の根源であるアモーレ先輩は、別の方向で突っ走っていた。
プリムラ先輩とはタイプが異なれど、変態同士。
(変な科学反応を起こして手がつけられなくなったら、どうしよう?)
闇鍋で、人同士も悪魔合体したら、始末に負えない。
ところが――。
「アモーレよ。あいかわらず、恋愛脳のエロバカだな」
「プリムラ。その言葉、そっくり返すよ」
「オレ、あかつきの巨乳を見てもムラムラしねえんだよ。普段は会うたびに500万回ぐらい揉みてえと思ってるのに」
あかつきさんは両手で胸を隠す。
「セクハラも気分が乗らん。悟りきった、この感じ…………もしや、賢者タイムになっちまったのか、このオレさまが」
闇鍋にしてよかった。
「今日、オレはエッチするために来たんだぞ。だから、鍋にパンツをぶち込んだってのによぉ」
現賢者、元おじさんは、驚くべき告白をした。
「さす、プリムラ。鍋にパンツ入れるとは、アモーレのライバルだけあるね?」
「ああ。本当は使用済み未洗濯がよかったけど、未開封品にしといてやったぜ」
「プリムラ先輩、変態は魔法少女あかつきが逮捕するよ」
「はにーもあかつきさんと一緒に逮捕しちゃうぞ」
賢者になったプリムラ先輩はおとなしくなったので、次に進めることにした。
「つぎは、スイレン先輩はどうですか?」
話を振ってみたら、船を漕いでいる。セーターに包まれた双丘が、たぷんたぷん。
僕は慌てて目をそらした。
「じゃあ、愛の求道者としてアモーレがあーんしてあげるね」
スイレン先輩の代わりに、アモーレ先輩が鍋に箸を突っ込む。
ニヤニヤしていて、小悪魔モードを絶賛発動中だ。
「ほいっ」
半開きの口に。
「入っちゃう。アモーレのししとう……スイレンちゃんのお口に入っていくよぉ❤❤❤」
ワイチューブさんに怒られないか不安になる。
:さすが、エロゲ好きVTuber
:ししとうがエロいんですけどw
「アモーレのししとう、獅子だけに太くて硬いよぉ」
「きゃらぁぁぁいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!!!」
スイレン先輩が悲鳴を上げた。
普段は寝ているか、おっとりしているかの先輩が大絶叫するとは⁉
(当たりを引いちゃった?)
通常、ししとうは辛くない。
栽培等の条件によっては、辛くなることもある。ストレスが関係する説もあるとか。
「スイレン先輩、はにー特製の蜂蜜をどうぞ」
僕はスプーンで蜂蜜をすくい、スイレン先輩に手渡す。
蜂蜜を飲み込んで、しばらくすると、青い顔が少しはマシになった。
「こんなに目がぱっちりしたの、200年ぶりだよっ」
現役高校生として微妙な発言をすると。
「じゃあ、おやすみ~」
スイレン先輩はふたたび眠りにつく。
わずか1分程度の覚醒だった。
「はにーちゃん、主役だし、トリは譲るよぉ」
「アモーレ先輩、お願いします」
アモーレ先輩は意気揚々と箸を鍋に突っ込む。
高確率で地雷を踏むというのに、楽しそうである。
僕と詩楽は美咲さんの強メンタルを見習った方がいいかもしれない。
アモーレ先輩が引き当てたのは――。
「紐パンじゃん。プリムラのパンツらしいね」
今回の闇鍋で初の食べられないものだった。
「アモーレは愛を語るモノだよ。パンツぐらい朝飯前さ」
紐パンの紐を口に入れ、モグモグ。さすがに紐を簡単には食いちぎれないのか、何度も噛む。まるで、硬いフランスパンと格闘するかのよう。
1分ほどして、ようやく呑み込んだ。
アモーレさんは箸でパンツを持ち上げる。
左右の紐が垂れた。右の方が少し短い。つまり、本当に食べたらしい。
「アモーレ先輩、大丈夫なんですか?」
「はにーちゃん、この人、芸のために体を張るから」
「おぅ、あかつきもわかってきたようだな」
:パンツを食う勇者あらわる
:さすが、虹メン
:あとで病院に運ばれるんじゃ
:医者になにを食ったか聞かれて、終わる奴な
「はあぁ、アモーレ、パンツを食べたら、欲情しちゃった。はにーちゃん、アモーレとの愛の証を鍋にぶち込もうよぉ」
「アモーレ先輩、魔法少女萌黄あかつきが阻止します」
「なら、3人で愛し合えばいいじゃん。『鍋と3Pとお汁』とか。愛の結晶が食べたいなぁ」
セクハラに及ぶアモーレ先輩に、あかつきさんが反対していたら。
「おま、ヘンタイすぐるぞ」
賢者タイム中のプリムラ先輩がアモーレ先輩をたしなめる。
「プリムラ、おまいう案件じゃん⁉」
案の定、アモーレ先輩に逆ギレされた。
「ん。どっちもどっち」
「あかつきさんに同意です」
セクハラコンビが騒ぐ中、僕とあかつきさんでボソボソ話す。
「セクハラ被害者の会を結成しようか?」
「あかつきさん、それな」
:セクハラ被害者の会爆誕!
:やっとか
「じゃあ、最後ははにーが食べるね」
僕は最後の具材を取り出す。
「えっ?」
真っ黒なブツは炭?
「なにかが焦げたみたいね」
あかつきさんが冷静に分析する。
正直に言うと、怖いけれど、自分で出した企画だ。
それに。
僕はいま、アニメ化企画を実現しようと動いていた。
少しでも新しいことにチャレンジして、人気が出るなら。
アモーレ先輩ではないけれど、体を張ることも必要かもしれない。
もちろん、無理のない範囲であるけれど。
僕は意を決して、黒い物体を口に放り込む。
炭みたいでいて、柔らかいソレは――。
爆弾だった。
爆弾としか表現しようのない味と歯ごたえだった。
意識を持って行かれそうになる。
だが、配信中。倒れるわけにはいかない。
必死に我慢していたら、背中に弾力を感じた。
間違いなく、カノジョの温もりである。
「はい、あーん」
おそらく詩楽が後ろに回って、蜂蜜を食べさせてくれようとしているのだろう。
僕は本能のまま、あーんされる。
濃厚な蜂蜜が破壊されかけた味覚を修復する。
どうにか持ちこたえられた。
「はにーちゃん、よく耐えられました」
あかつきさんは僕の手を引く。弱った体は抵抗できずに、後ろを向く形に。
そのまま、頬が至福物質に包まれた。
「あかつきのお胸でおやすみなさい」
危険物体に触れた直後なのもあり、おっぱいの癒やしを普段以上に感じた。
「はにーちゃん、お誕生日おめでとう。大変な配信だったけど、あたしは楽しかったよ。これからも仲良くしてね」
:あかはに、てぇてぇ ¥50000
:最後に良いものを見させてもらった ¥50000
赤ウルが飛び交う。
回復した僕は、シメに入る。
「大変だったけれど、こんなにバカ騒ぎした誕生日は生まれて初めて」
みんなして大爆笑する。楽しそうだった。
心地よい雰囲気のなか、僕は真面目に語り出す。
「去年までは寂しい誕生日だったの。いろいろ大変なこともあったし」
事情を知る詩楽が僕の手を握ってくれる。
他の人たちも僕に優しい笑顔を向け、励ましてくれる。
「けれど、今年は先輩やリスナーさんに祝ってもらって、最高の誕生日でした」
僕は息を深く吸い込んで。
「レインボウコネクトに入って、本当によかった」
涙を拭くと、配信を終わらせた。
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