第43話 【1月1日】【#正月衣装】みんなで新衣装みせあうよ!【レインボウコネクト/アーク】

 1月1日。午後。

 新年早々、僕と詩楽は運営公式の配信に参加していた。


 開始早々。司会の2期生、花咲プリムラ先輩は。


『今日は3期生と、はにーちゃんが、なんとお正月衣装になるからな。オレ、楽しみすぎて、一睡もしてねえっての』


 思いっきり鼻息を荒くする。


『今日は誰をお持ち帰りしちゃおっかなー』


 イケメン系お姉さんは後輩4人に対して、露骨に性欲を剥き出しにするが。


『……王子様、残念。あたしははにーちゃんにしかお持ち帰りされない』

『拙者に真剣勝負で勝ってみせたら、好きにするがいい。拙者は侍だが、くっ、コロしてみたい』


 萌黄あかつきさんは僕しか見えてないし、虎徹舞華さんは意味不明な反応をする。


:あかはに、新年からメチャクチャしてそう

:あかはに、てぇてぇ

:プリムラ、Opaxならワンチャンあるかもよ


「プリムラ先輩、今度、店内で食事しましょうよ」


 僕はお持ち帰りに引っかけてみた。


『そもそも、オフコラボでも、スタジオでもないしね』


 3期生の小羊おーぶさんがもっともなことを言う。

 まあ、今日のメンバーは全員、同じマンションの同じ階虹ハウスに住んでいる。お持ち帰りも何もないんだが、そこは突っ込まないでおく。


『ってなわけで、あけよろ。今年もレインボウコネクトをよろしく……って、真面目な挨拶よりも、オレは新衣装を拝みてえんじゃ!』


 プリムラ先輩の欲望はとどまることを知らない。

 さくらアモーレさんといい、2期生の先輩アカンな。もっとやれ。


『オレ、我慢できなくて、事案起こしそうだよぉぉっ。運営のためにも、小羊はよ着替えてくれぇぇっ!!!!!!!!!!!!!!』


 ついには脅迫までし始めた。


『占いにも出ました。プリムラ先輩、おまわりさんを召喚する可能性がある、と』


 おーぶさんは新年早々、ある意味ホラーなことを言いながら、消えていく。


   ○


 時間は流れ、30分後。

 おーぶさんと虎徹さんの正月衣装お披露目が終わり、あかつきさんの着替え中になっていた。

 なお、着替え中といっても、あくまでも演出の話。実際の詩楽は着替えてないはず。


『ふたりとも和装よく似合ってんなあ。オレ、脱がしたくなってきた』


 着物を褒めておきながら、矛盾したことをのたまう先輩である。


 なお、プリムラ先輩の言うとおり、ふたりともかなり良い感じだ。


 占い師キャラのおーぶさんは巫女服になって、お祓い棒を持っている。スピリチュアルを残しつつ、かわいい巫女さん要素を打ち出している。


 虎徹さんもベースの衣装が和装なので、晴れ着でも違和感がない。貧乏侍から大名の子女になった感があるぐらいか。


 適当に先輩たちと話していたら、あかつきさんが現れた。


『おおぉっ!』


 配信中なのに、リスナー目線で叫んでしまった。


 すばらしい。

 魔法少女なので通常の和服に比べて、動きやすさが優先されている。その分、布が少なく太ももはむっちり。

 デザインも水色の布地に、ピンクの花模様が入っている。

 銀髪と着物の愛称もバッチリ。


(リアルの詩楽、どうなんだろうな?)


 リアルでも髪の色は似ているので、どうしても期待が高まる。

 明後日、初詣に行く約束をしているけれど、いまから楽しみになってきた。


『さあ、みなの衆。スクショタイムであるぞ』

『ですね、プリムラ先輩』

『はにーたん、ついに本性出したか。オレとあかつきの魅力について、酒を酌み交わして語り合おうぜ』

『あかつきさん愛を語るのはいいですけど、お酒は怒られますよ』

『正月なんだ。細けえこたぁ、気にすんなし』


 運営公式の配信で、リアル高校生がとんでもないこと口走った。

 しかも、うちの運営スタッフには先生もいる。運営のトップは学校の理事長でもある。


 スクショタイムの間もプリムラ先輩はヘンタイ剥き出しだった。『リアルだったら、ローアンするのになぁ』まで言い出す始末。

 僕はしゃべりながら、普通にスクショを撮りましたとさ。


『魔法少女あかつきは今年も戦うからね』

『後輩、決意宣言かな?』

『ええ。あたし、ポンコツですけど、世界のみんなが幸せになるまで戦うから』


 かっこいい。

 またしても、リスナー目線になってしまった。


『いまの世の中、不幸に満ちあふれてる。この放送を見ている人も不安を抱えているかもしれない。あたしも豆腐メンタルだし』

『あかつき、リアルだとマジでコミュ障だかんな』

『そうそう。あたし、ぶっきらぼうだもんね』


 先輩の軽妙なトークのおかげで、空気が重くならない。


『じゃなくって』

『はにー、あかつきさんの決意を聞きたいな』


 僕は詩楽をフォローする。


『世の中は厳しいけど、あたしも楽になりたいし、周りも幸せにしたいの。去年は虹に入って、みんなから優しさをもらったしね』


:新年初泣き

:オラ、あかつきちゃんに元気を分ける!


『はにーちゃん、泣いてないで。着替えてこいよ!』


 ガチ泣きしていたら、先輩にエロい声を向けられた。


『トリで恐縮だけど、はにーもお着替えしてくるねぇ』


 僕はPCを操作し、はにーのアバターを配信画面からいったん消す。

 みんなが話している間に、アバターの衣装は和服に差し替える。


 会話が一段落したのを見計らって。


「みなさん、お待たせしました」

『おっ、はにーたん……って、足だけじゃねえか⁉』


 新衣装お披露目の定番を守ったら、怒られた。


『オレ、もう我慢できん。はぁはぁ、なんか出ちゃう❤❤❤❤』

『魔法少女萌黄あかつき。ヘンタイから美少女を守るね』

『拙者も助太刀いたす』

『うーん、プリムラ先輩の運勢、大凶。残りの正月は臭い飯を食べるかも』


 プリムラ先輩が暴走したら、みんなして僕の味方になってくれた。

 ゆっくり僕は花蜜はにーの正月衣装を公開していく。


:おおっ、金髪美少女の和服って感じ

:片言の日本語でしゃべってほしいな


 リスナーさんの希望には応えたい。

 けれど、炎上リスクもある。外国人の立場で考えたら、バカにされたと感じるかもしれないし。


「これから演技しますけど、けっして、外国の方をバカにするつもりはありませんから」


 予防線を張ってみた。


「あ、あの~。わたくし、じんじゃに行きたいでスね。でも、ばしょわかりませんでス。つれて行ってくださいネ」

『お、オレさまが神社に案内するぞ。ただ、神社は混むから疲れるな。帰りにお城で休憩しようか?』

『プリムラ先輩、あたしのはにーちゃんをナンパするのはやめてください。はにーちゃんはあたしが案内するの』


 先輩のセクハラにあかつきさんが抗議する。かなり素が入っている。


『あの、みんなで初詣したら、どうかな?』


 僕は演技を解除して、ふたりをなだめるのだった。

 その後も、騒がしい正月の配信が続く。

 楽しい新年の幕開けだった。

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