第41話 【11月19日】彼氏の配信を見て××

【夢乃詩楽視点】

 金曜日。学校が終わると、あたしはサインを書き書き。

 彼が作ってくれた夕ご飯を食べてから、さらに書き書き。

 疲れてきたので、今日はこれぐらいにしよう。


 自分の配信が始まるまで2時間ほど。

 サムネ作りや、ワイチューブに枠を立てるなどの事前作業も終わっている。


 勉強をしながら、誰かの配信でも見ようか。

 虹メンの予定を確認する。


「うわっ、彼氏の配信があったじゃん」


(最近、忙しいけどさ、彼女失格だよね)

 メチャクチャ落ち込んでいたら、甘音ちゃんの配信が始まった。


『おにいちゃん、おねえちゃん。いつもありがとね。

 今日は、ミルフィーユで募集していた、シチュエーションボイスを読んじゃうぞ~』


 鼻血が出そうになった。


(ガチでシコれるじゃん!)


「甘音ちゃんボイス、すこすこのすこ」


 最初のお題はスケートリンクだった。

 状況を聞くうちに雲行きが怪しくなっていく。


「うちの甘音ちゃん、なにしてくれてんじゃ!」


ローアングラーローアンなんて、何年前のネタだっての⁉)


 しかも、氷の上に寝そべってでも、パンツを見たいなんて――わかる。

 わかりすぎる。

 ただし、甘音ちゃんや、はにーちゃんに限る。


 ヘンタイ投稿者がはにーちゃんに要求したセリフもクズ丸出しだった。


 あたしの甘音ちゃんは、甘い声がかわいいの。

 塩対応じゃなく、砂糖対応なの?

 しかも、ハチミツたっぷり、激甘、甘々の甘之助。糖分たっぷりなんだからぁ。


「えへっ?」


 妄想しただけで、ヤバい汁が出た。

 あ、ヨダレだから。

 あたし清楚だから、○○はしないし。


 うちの甘音ちゃんに、なんてこと言わせんのさ――ちょっ、最高なんですけど。


 塩対応の甘音ちゃん、塩に微量の砂糖を入れて味付けしてるようで、絶妙なサジ加減なのだ。


 このネタ考えついたヘンタイ、神なんじゃね。


「甘音ちゃん検定8段のあたしが遅れを取るとは……」


 ヘンタイ投稿神でも不可能で、あたしに可能なプレイもある。

 次の休みにでも、あたしのスカートを貸そう。サイズが厳しいなら、甘音ちゃん用にスカートをオーダーしようか。

 いまのシチュエーションで女装した甘音ちゃんに、おパンツ見せてもらいたい。


 普段、あたしにダダ甘の甘音ちゃんが、ツンツンしてきたら……?

 ブヒれるのは間違いなし。


 つづいてのネタも最高だった。


(酔って、かわいくなるのも鉄板だよね)


 今度、ブランデーチョコを買ってきて、甘音ちゃんに食べさせてみようか。

 もちろん、だまし討ちではなく、事前にお酒入りと正直に説明する。

 と、思ったけれど。


「万が一、問題が起きたら?」


 ブランデーチョコを未成年が食べても法律的な問題はないらしい。

 とはいえ、彼の肉体的に大丈夫かどうかは別の話。甘音ちゃんの体質的にお酒が無理な可能性もある。


 あたしの欲望を暴走させて、大好きな彼を苦しめたくなかった。

 仕方ない。アーカイブは残るだろうし、切り抜いて個人で鑑賞しよう。


 つぎは、はにーちゃんが彼氏と添い寝するシチュエーションだった。


「これで勝つる!」


 あたしも週に何度かしてるけど。


「おまえら、あたしを神と崇めるがいい」


 はにーちゃんのリスナーに対して、ドヤった。

 ベッドの中でも、甘音ちゃん、マジで優しいし。


 思い出すだけで体が火照ってくる。


「はぁはぁ」


 気づいたら、スカートの中に手を突っ込んでいた。


「……あっ、あたし清楚なのに、なにやってんだろ」


 でも、我慢できないんだもん。


 というのは。

『ちゅっ』という音が聞こえてきて。


 あたしも、キスはされてないから。

 交際を始めて、2ヵ月弱。その間、あたしたちはキス未満の関係を続けている。


 あわよくば、クリスマスを狙って、その先に進めたいとは思っているけれど。


(甘音ちゃん、あたしのこと大事にしすぎるから)


 奏にクギを刺されているとはいえ、健全な男子高校生だったらキスしたくなってもおかしくない。

 なのに、彼は必要以上にあたしに触れてこない。


「まあ、キス音だけでも成果あったか」


 彼女としてはキスしたいけれど、妥協するしかない。


「どちゃシコれたし、ウルチャを送ろう」


 あたしは5万円の赤ウルを投げる。

 課金額によって、ウルチャのコメントには色がつく。

 赤ウルとは最高額を投入したときの色で、ワイチューブのコメント欄に滞留する時間も一番長い。


 おかげさまで、先月もウルチャだけで1000万以上いただいた。推しに使うのが正しい利用法だと思われる。


 彼氏に5万円課金して、すがすがしい気分になった。



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