第5話
「ようやっと魔力が満ちたっきゅ。お前、本当に魔法使いっきゅか?ちっとしか魔力がないじゃないッキュか。おかげで、相性の悪い火や氷の魔力を吸収する羽目になったッキュ。あ~~~腹痛いっきゅ!」
ほのかの手のひらで流暢に喋りだしたぬいぐるみは不満げに言った。
「何を驚いてるんきゅか」
急に喋りだしたぬいぐるみは丸っこいフォルムに手足と大きなしっぽがあり、リスをベースにしたかのようなデザインだった。翠色のそいつはぴょこぴょこと耳を動かしている。
「まったく僕の愛らしいボディに釘漬けっきゅか?」
ちょっと生意気なところがかわいいかもしれない。
「貧乳ども」
訂正全然可愛くない。手のひらにくっついたぬいぐるみを静かに塀にあてる。
「で、何なんだろうね。これ」
歩きながら、かおり先輩に尋ねる。
ごりごりごりごり
「ああ、あたしも初めて見たよ。」
ガリガリガリガリ
「みぎゃあああああ!すり減る!すり減るッキュ!」
「?かおり先輩は氷の動物を操っていたじゃないですか」
ずりずりずり
「あれは、氷を形づけて動かしてるだけだ。ぬいぐるみに命を吹き込む魔法なんて、聞いたことないぞ」
杖を振って、氷の鳥を出す。
「この、貧乳、ども、が、乳を、洗って、出直し、ぎゃああああ」
めりめりめり
「かおり先輩は、あんなに強そうなやつを倒せるのに、」
「いやいや、倒して無いからな。あたしなんてひよっこのひよっこさ。自分の実力を履き違えてないよ」
彼女はさらに次々と動物を出す。鳥、蛇、亀、猪、狼、猫…。
「え?だって、さっきの狐さんをやっつけたじゃない」
ギリギリギリギリ
「ワタが!ワタが出ちゃう!お腹の中身が出ちゃうっきゅ!ごめん!ごめんなさい!
「あの人は本気を出てないよ。だってよ…」
先を歩いていたかおりが振り返って言う。氷の動物たちが、彼女の周りを警戒する。
「限界っきゅ!限界っきゅうあああ!!」
「杖を抜いてないだろ?」
「え?」
ぶちゅ!
嫌な音をして、ぬいぐるみは静かになった。
まだ、戦闘は終わってない。
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