第3話

「ぬぅおりゃああああ」

「ふんぬぅあああああ」


乙女2人がものすごい声を出しながら、ぬいぐるみを引き離そうと引っ張っている。


「どぅおりゃあああああ」

「ちぇすとおおおお」


ふたりの顔が真っ赤に変わってるが手のひらに収まっていたぬいぐるみは微動だにせず。


「ふんがあああああ」

「ぶるばぁああああ」


ちぎれ、ちぎれるっきゅ!!2つになっちゃうきゅぅあ?!


「かおり先輩なにか言いました?ちぎれるぅって」


「いってねぇよ。…ほのか、お前どっかで呪いでももらったんじゃないか?」


「呪い?」


「ああ。こんだけ引っ張って、途中から腕引き抜いてやろうってぐらい力入れてんのに」


「まって、かおり先輩!ぶっそうなことが聞こえた。」


「びくともしないとなると、なんらかの魔法としか思えない。魔力がほとんど感じられないから、使い手は相当な手練れかもな。てか、ほのか、お前はなんで、このぬいぐるみを取りに来たんだ?」


くたびれた人形を指さしていった。くすんだ緑色のその人形には糸がほつれて、ところどころ綿が飛び出ていた。けっして年頃の女の子が好んで、欲しいと思うものではない。


「えっと、おばあさんに頼まれたから」


「おばあさん?」


「そう、とっても大切な思い出のぬいぐるみだから、とってきてほしいんだって。自分は腰を悪くしてしまっていて、たくさんは歩けないって」


「ふ~ん。お前もお人よしなんだな」


「とても必死な様子で、手をぎゅっと握って話すから。無下にもできなくて。私にはおばあちゃんいないし。思い出があるものなら大切にしないとね」


「まぁ美談だが、その結果がこのくたびれた人形をぶら下げる形になったわけか…」


「まぁね」


照れくさそうに笑ったほのかを見て、かおりも苦笑した。おそらく、そのおばあさんとやらが、呪いをかけた本人の可能性が高い。しかし、ほのかの気持ちを考えると、

確信を持たない限り、このことをわざわざ告げる必要はない。


「んじゃあ、目的は達成したわけだし、そのおばあさんのところにいってみようか。どこかで待ち合わせしているんだろう?」


「うん」


ほのかが指さした先、結界の外には狐面の女が立っていた。


「返してもらいましょうか」


「…どうしてここがわかったのかねぇ」


かおりは結界の外の強敵に杖を向ける。


「声がご近所中に響いてうるさいって何件も相談所に連絡があった。ゴリラみたいな唸り声がうるさいって。まさか、ここまで間抜けだとはな。」


淡々と魔法使いは言った。


「…かおり先輩。私超恥ずかしいです」


「安心しな・・・私もだ」







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