第2話

「はぁ、はぁ、はぁ、今の音、何?!」


「ち、結界崩しだな。くそ、わたしの張ってた惑わせの結界が砕かれちまった。」


2人は民家の庭に逃げ込み、肩で息をしていた。先程ガラスが大量に砕けるような音が聞こえ、山高帽子で自身を仰いでいた女は、苦々しく言った。


「家主には悪いが、簡易結界だけは張っておくか。気休め程度にはなるだろう。さてと、狂え、惑え、隠して、守れ。鏡面の甲羅で我らを隠せ。氷亀ミラータートル。しっ、とりあえず、暫くは大丈夫だろ。」


氷のドームが2人を包む。キラキラと輝く壁面には自分の顔が映っていた。


「す、」


「す?」


「すっっごぉぉおい!鳥が飛んだり、火の玉が飛んできたり!えっと、結界ってなんか防御魔法的な?何かの撮影?プロジェクションマッピング?」


「は?お前何言って」


彼女はぴょんぴょん跳ねながら興奮する少女を見つめる。ポニーテールを結び、真新しいブレザーの制服をきた少女。期待に胸を膨らませているようだ。実際の胸は絶壁なのだが。


「ちょ、どこ見てるんですか!」


彼女は胸を腕で隠す。


いや、いや、それは胸があるやつがするポーズッキュ


「え?」


「ん?どうしたんだ。」


「気のせい?」


少年のような声が失礼なことを言った気がしたのだが。

ぬいぐるみを万力込めて握っていたら、気持ちが収まってきた。これがスクイーズってやつなのだろうか。


「あ、あの、たすけてくれて、ありがとうございます。えっと…」


「あ、かおりって言うんだ。あたし。赤鷲あかわしかおり。よろしくな」


ニカッと笑う。健康的な笑顔がとても爽やかだった。


「えっと、赤鷲さん、ありがとうございます。わたしは木守こもりほのかっていいます。この春から破魔中学校に入学します。」


「かおりでいいさ。破魔中ってことは、後輩だな。しっしっし」


「じゃあ、かおり…先輩ですね!」


「おう!なんだほのか!わたしは先輩!何でも頼れよ!」


照れくさくも得意気に胸を叩く。ほのかは、キラキラとした目で先輩を見つめる。


「じゃあ、先輩…。この、ぬいぐるみ、手から離れないんですけど、助けて」


「はい?」


ブンブンと振り回すほのかの手には緑色のぬいぐるみが握られていた。

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