魔法少女ほのか~中学1年生編 エピソード1 記憶の魔女〜

お花畑ラブ子

第1話 始まりの物語 4月

日本の山中に人知れず存在する町、破魔町。


魔法使い達と人間達が共存する町。


町の中央には御神木と呼ばれる巨大な木。


そこを中心に町は東と西に分かれる。


東は魔法使いが、西は人間が住み相互に関わることはほとんどない



「ヒィやああああああああ」


乙女の絶叫が響き渡る。


「・・・・よこしなさい」


「絶対渡すなよ!!」


何か言い争っているかのように、三人の少女の姿が見えてきた。


先ほどの絶叫していた少女が片手に緑色のぬいぐるみを持ち、全力で走ってくる。


「死ぬ死ぬ死ぬ!絶対に、死ぬぅ!ひぃ!」


彼女が前方に飛んだ直後、先程までの場所に炎の球が降り注ぐ。


「もう、やだぁ!」


「泣くな!死にたくなかったら全力で走れ」


泣いている少女はポニーテールをたなびかせて、すんでのところで、攻撃をかわす。


「いやぁあ!買ったばかりのおにゅうの服があああ」


一部かわしきれずに、スカートが焦げる。


「それどころじゃねぇだろ!…ったく!しゃあねぇ!振り向かずに走れよ!!穿て!群れて!貫きやがれ!氷鳥アイスバード!!」


もう1人の少女は、ボロボロの山高帽子を手で抑えながら、振り向きざまに杖を取り出す。声に合わせて3回杖を鋭く振るう。野性味じみた傷だらけの横顔に犬歯が覗く。


細やかな模様の書かれた青みがかった杖から、勢いよく、氷で出来た小鳥達が現れ、襲撃者に鋭く飛んでいく。


「…、ふっ」


赤い模様が描かれた狐面の襲撃者は、短く息を吐く。

セーラー服に日本刀、加えて狐面という彼女は、通学路で見かけるには、物騒すぎる面持ちだった。

体が地面に沈んだかと思うと、既に氷で出来た鳥たちは1匹残らず切り伏せられていた。


「…魔炎剣・桜花火」


チン


という音が静かに響き、両断された鳥は燃え上がり彼方に消える。


「…着地を狙われたのね」


走り出そうと足に力を入れたが、氷で出来た蛇が彼女を地面に縫い付けていた。

それも鞘の一突きで燃え上がる。


「…かおりちゃん、カウンターズに本気で歯向かう気なの?」


彼女のつぶやきに答えるものはいない。刀を鞘にしまい、そのまま静かに呟く。


「…隠し、隠され、黒屏風、幕は降りたぞ、茶番はしまい…結界崩し」


ガラスが砕けるような音がする。


残るはいつもの日常。いつもの風景。


だが、魔法使いの少女たちの物語は、激しくも人知れず幕をあける。

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