突発的レイドイベント 1

 その日、私は一人で依頼クエストを受けた。今回はギルドマスターからの個人指名だったのだから仕方ない。


 ギルドマスターが言うには、指名依頼クエストの内容はこうだ。


「最近、新米も増えて来たからな。お前さんに新米達の教導を頼みたい。実力が上の相手との訓練も大事だろう?それに、お前さんなら限界の見極めも上手いだろ。それにもし、この依頼クエストを受けてくれたら、アリアが壊したテーブルも、キアが壊した壁も、アレスのアレにも目をつむってやる。よろしく頼むな?」


 別に最後の餌に三つに釣られて今回の依頼を無償で受けた訳ではないのだ。ないったらない。


 依頼クエストの集合場所は、この街の中央にある巨大闘技場。年に一度、そこで自分の実力に自信のある者や腕試しに来た者が技や実力を闘い競い会う祭りが行われ、その祭りの為に世界中の様々な国や地域から人が集まって来る。その祭りの名を闘技祭もしくは闘技大会と呼び、そこから名を取って闘技場と呼ばれる様になったらしい。いや、別に呼び方はどちらでも良いらしいのだけれど。ちなみに私は144年前に出場して以来参加していない。


 理由としては、当時の主催者から

君、強すぎるから殿堂入りねオメェ、ブラックリスト入りな」と言われたからだ。

 11年も祭りの優勝者が変わらないのだから仕方がない。


 普通なら、もう144年も時が経ったのだから大丈夫だろうと思うだろう。だが、それは無理なのである。何故かって?そこで優勝すると特殊な魔道具でその時の姿を絵にし、紙や板に写し残すのだ。という訳で私の姿絵は11枚も保管されているのだ。ちなみに私は龍人と魔人のハーフな訳だが、両種族共に長命であるがゆえに成長が非常に緩やかなのである。つまり何が言いたいのかというと、私の見た目は当時の姿絵から何も変わっていないのである。そりゃあ、登録エントリー時にはじかれるよねってね。


 闘技場に着いた訳だが……いや、あのぉ……そのぉ……人、多くない?多過ぎない?多過ぎないですか?冒険者プレイヤーが闘技場から溢れてるよ?何なら私も入れてないよ?


 うん。


 邪魔だから全員、蹴散らしていこうか。

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取り敢えず、私は貴方達が呼ぶ『えぬぴぃしー』という名前ではないです。 やさかなぎ @Misha-Lotos

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