取り敢えず、彼女は貴方達が呼ぶ『ロリフ』という名前ではないです。

 topic

 森人エルフ族は魔力マナの扱いに長けた種族である。

 ―――――――――――――――――――――――――――


「それで何?アンタはそんなアホなことやって憲兵のお世話になったわけ?」


 対面に座る彼女は呆れた表情かおをしている。


「………加減はした」


 彼女は呆れた表情かおをした。


「なに?170年も生きてきてアンタは我慢も碌に出来ない子供なの?」


 あれは、仕方がないと思う。私が我慢出来なかったんだ。きっと彼女だってそうする。

 あと、――――――


「170年じゃなくて167年だ。」


人族ヒューマン獣人ビースト以外の種族からしたら3年なんて誤差よ、誤差。アンタは、産まれたばっかだからそんな細かいこと気にすんの。アンタも生きてりゃ、そんなの気になんなくなるわよ」


 そんなことで年上アピールをするくらいなら、もう少し落ち着きをもって欲しい。」


 口に出してしまっていた。


「あらぁ?そんなこと言っていいわけぇ?ふぅん?そぉなんだぁ…」


 この流れはまずい。非常にまずい。どう、まずいのかと説明すると―――――。


「ねぇえ?昔はアリアお姉ちゃん、アリアお姉ちゃんって私の後ろについて回ってた―――――ちゃん?」


 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!


「他には転んで私に泣きついて来たりぃ、オムツを替えてあげたりも―――


 顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が熱い。顔が―――――――。


「………恥ずかしいのでやめてください」


 彼女の言葉を遮った私の言葉は、とてもか細く弱々しかったのだろう。彼女は今にも吹き出しそうに口角を上げながらプルプルと震えている。


「…ッ………ッ……ッ…」


 というか、吹き出しているんじゃないだろうか。もう顔を手で覆い隠したい。というか隠した。なんならテーブルに顔を伏せたうえで顔を覆い隠した。顔は見えてないと思う。恐らく。多分。きっと。―――――見えてないといいな。


「……ッ…耳まで真っ赤にしちゃって、まぁ!本当にそういうところは小さかった頃と変わんなくて可愛いんだから!!」


 そう言われて頭巾フードを被り少しだけ顔を上げる。これだから彼女にいつまでたっても子供扱いされるのだ。見た目は彼女の方が子供なのに。


「そんな表情かおしてぇ!どうせ、私の方が子供っぽいのにぃ~とか考えてんでしょ?お見通しよ、そのくらい。何年、アンタと一緒にいると思ってんのよ」


 そう言いながら頭巾フードの上から私の頭を撫でてくる。しばらく撫で続けると満足したのか彼女は立ち上がり声を掛けてきた。


「さてと、アイツ等も待ってるだろうし、そろそろギルドに行きましょ?」


 少し待っていて欲しい。今、店主にお代を「大丈夫よ、先に私が払っといたから。ほら、さっさと行くわよ」


「………ごちそうさまでした」


 財布をしまい、先に店を出て行った彼女を追いかけるため、店の外に出る。すると見慣れた景色が今日も広がっている。至るところに人、人、人、人、人の波。今日も街中冒険者プレイヤーだらけである。先に出ていった彼女アリアを探しながらギルドまでの道程を歩いていると、冒険者プレイヤー達が人だかりになっている場に出くわした。


「ほら、邪魔よアンタ達。退きなさい」


 ついでに彼女も発見した。相変わらず彼等との会話はこちらからの一方通行で話が通じないようだ。そして案の定、彼等の言っている言葉の意味が、私にはよく分からない。


「だから、退けなさいっての!!あと、そのワケわかんない呼び方もやめなさいよ!!!」


 どうも様子をみるに10人以上の冒険者プレイヤー達が彼女を囲みロリだの幼女だのロリフだのと騒いでいるようだ。そして相変わらず彼等は通行の妨げになっていた。あと、ロリババアのロリの意味はわからんが、幼女とババアはわかる。それはいけない。長命な森人エルフである彼女にその二つは禁句である。というか、女性にむかってババアはよろしくない。私が言われたらへこむ。


「………今、なんて言ったの?私にババアって言ったのかしら?」


 可視化できる程の量の魔力マナが渦を巻きながら彼女に集まっていく。


「………流石に我慢の限界よ。今さら謝ったって遅いんだから!!」


 集めた魔力マナを使い彼女は魔方陣を展開していく。


 ………?うん?あれ?待って?ちょっと待って?明らかに魔力マナ集めすぎじゃないかな?これって明らかに街中でぶっぱなす威力じゃないよね?うん。でも加減はしたんですね。最上級とはいえ風属性の魔法陣だもんね。でも、風属性ならいいって訳じゃないんだよ?


「………泣いて後悔しなさい」


 魔力マナをかき集め、急いで防御魔法陣を展開する。


「間に合っ「壊嵐テンペスター!!!」


 彼女の展開した魔法陣から集められた魔力マナが解き放たれ、彼女アリアを囲み騒いでいた冒険者プレイヤー達に襲いかかる。


 30秒程たっただろうか。いまだに土煙が晴れることはなく、彼女がもう一度魔力マナを集め土煙を払ったようだ。するとどうだろう。至るところに冒険者プレイヤーが埋まっている。死屍累々です。


「………流石にやりすぎだ」


 息を整え終えた彼女は、こちらを向き言い返してきた。


「………ふぅ。………詠唱の破棄もして加減もしたし、アンタが発動した防御魔法のお陰で、街や住民に被害が出てないんだからいいじゃない!そもそもアンタなんて私がぶっぱなす前から手ぇ出してんじゃないのよ!!アンタの後ろ見てみなさいよ!!壁やら道やら至るところから人の下半身が生えてるじゃない!!!」


 それでも街中で最上級魔法はやりすぎだと思う。


「なによその表情かおは?!私が悪いってわけ?!どう考えてもコイツらが悪いんじゃない!!アンタ達もそう思ってるわけ?!良いわよ!!出るとこ出てやるんだから!!」


 そして私は、彼女アリアローゼと共に憲兵達に連れて行かれた。


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 始まりの街には、世界最強に説教を垂れたあげく、自分も一緒に憲兵のお世話になる(見た目は)少女の森人エルフ族(2400歳)がいるらしい

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