第52話 拉致連行
「先生、診てもらえますか?」
「
少女を拉致したままダンジョンへと連行して一息ついたところで、少女の状態を確認することになったのだが空気が重い。やらかしてこわばった顔のノアさんと少女を下ろした途端に若干距離を取るアユミさん。なにせ顔の半分が赤いボツボツで覆われているので得体のしれない伝染病に感染している恐れもある。あと獣が雑巾を絞った水に濡れたような刺激臭がする。
●水痘帯状疱疹ウイルス発症、サルコペニア、クワシオルコル、飢餓、頭部裂傷、上腕部打撲、脚部擦過傷、顔面部挫滅創
うわーやばそう。
かつてないほどの症状の羅列と、やはり伝染病に感染しているようだ。
「治せそうですか?」
「……ちょっとネットで調べないと何とも言えないですが大分良くないですね」
とりあえず
「衛生面でもとりあえずお風呂に入れた方がいいですね」
やはりアユミさんも匂いが気になっていたらしい。服も元の色が分からないくらいに泥に汚れ、髪の毛も見ただけでゴワゴワだ。肌だって垢と土埃にまみれている。
「しょうがないのでとりあえず家に連れていきますか。ネットで検索したいですし」
「すいませんっす。軽率でした」
アユミさんの冷ややかな視線で縮こまってしまったノアさんへの説教は後々アユミさんにお任せするとして、前向きに考えよう。現地の協力者をGetしたと思えばいい。少し日本語を覚えてもらえば通訳にもなる。ただ病気が治せるのならばだけど。
よろよろと覚束ない足取りの少女を小脇に抱えてお持ち帰りすることにした。部屋に戻るときも自分と触れていなければだめなのでしょうがない。
ダンジョンから出たドアを少女とアユミさん、ノアさんが即座に入っていく。そういえばそこがトイレ付バスでしたね。忘れてました。自分は入れないし台所で手洗いうがいだ。
「先生、何があったの~?」
バタバタと慌ただしくしていたせいか、マイさんとアイリさんはさすがに起きたらしい。アイリさんは寝袋のまま同じ質問の視線を投げかけているだけだ。
「虐待されていた現地少女をノアさんが助けてしまいまして。水ぼうそうなので一応感染に気を付けてください。あ、タオルと着替え……はないか。とりあえずタオルを渡してもらえます?」
「は~い」
「お粥、作ります?」
おお、アイリさん気が利く。
「お願いします。冷凍しているご飯もありますので。タンパク質とビタミンとカロリーが足りないみたいです」
「多分ミネラルも含め全部ですね。卵とかはあります?」
「はい、冷蔵庫に」
「現代社会の食で懐柔すればいいんですね。お任せください。うま味調味料の虜にしてやります」
寝起きのせいか素なのか、にこりともしないままのアイリさんだったが何かを納得して何か理解しているようなので全面的にお任せしてしまうことにした。
でも、うま味調味料の虜って何か怖い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます