第42話 入門コース
「なんか久しぶりだな先生」
「お疲れ様です。タイムカード作っておきましたので」
「お疲れ様です~」
午後になり勝田さんとマイさんがやってきた。1時間1万円のキャバクラ黒服レベリング第一弾だ。うまく安定収入に繋げたい気持ちと、色々ばれないようにと不安が混ぜこぜだ。
「統括、お疲れ様です。今日は安全第一で行きましょう。さっそくコースプランを説明しますね」
既にフル装備のアユミさんが持っているA4用紙には3つのコースが記載されていた。
「まずは入門コース。比較的安全な1層から4層まで。多分黒服さん達はスキルを回復士の小治癒、小解毒をメインに取ってもらうことになるコースです。今回の行程でのスキルポイントは9ですのでこれだけで4消費します。料金は随伴員1名以上付きまして1時間1万円で3時間を予定しています」
アユミさんのプランでは入門コースとして黒服さん達は4層まででレベルは9に据え置く予定だ。下の方に小さく記載されたスキル一覧には魔道士はもちろん記載されていない。
「次が中級コース。5層のボスと6層まで。怪我などのリスクも高いので随伴員は2名以上で1時間5万円とさせていただきました。最短行程での取得スキルポイントは4です」
この辺から高額にして、浅層で時間を使って200体やるか時間を買うかの選択肢を与えつつも、どっちもお金がかかる仕様だ。レベルアップという手段を得た人間の欲はここでお金に変換される。
「最後に上級コース。8層までで最短行程での取得スキルポイントは6。随伴員は4名以上で1時間30万円になります。全コース、1分でもオーバーしたら1時間分料金をいただきますのでご了承ください」
魔法を使わないとキツイ階層なのである意味お断り料金の設定だ。納得の料金設定。さすがアユミさんだ。
「入門はともかく、他は随分高いな」
「こちらもリスクがありますので」
「すっかり先生サイドか」
「弟子ですので」
アユミさんと勝田さんはにらみ合っているわけではないのだが、合わさった視線がバチバチと音を立てそうな勢いだ。
「まぁ入門でお願いしようか。装備は貸してもらえるのか?」
「は~い。革の服とあそこに置いてある武器なら~。向こうで買った装備を保管するロッカーも有料で貸し出す予定で~す」
選べるようなことを言いつつ革の服とメイスを持ってくるマイさんだ。勝田さんもとりあえず何でもいいらしい。
タイムカードに打刻してもらい、備考欄に入門と記載し随伴員の自分のハンコを押す。魔力への適応の準備もしていざ迷宮入りだ。
アユミさんが敵の注目を集め、マイさんが戦闘不能にし、勝田さんがトドメを刺す。俺は道案内人として付いていくだけだ。
サクサクと進み、2時間ほどで4層も完了し、わざわざショートカットを使わずに徒歩で戻る。兜が煩わしい女性陣は先に戻ってもらい勝田さんと2人で迷宮街の教会へ。
「ほぉ……たしかに異世界だわ。こりゃあ」
「一応、気を付けてください。言葉も通じませんので」
現代日本からすると原始的にも思える低層しかない木造建物が並ぶ迷宮街と武器を携帯している人々を眺めて、さすがの勝田さんも感嘆していた。
「回復士になる場合は回復士になりたいと願ってくださいね」
「了解した。おおぉ、なるほどすげーな」
教会で合掌のやり方を教えると早速始めたらしい。頭の中に声が聞こえるとか向こうじゃ絶対に経験できない。新鮮なリアクションについ頬が緩んでしまう。
うんうんと悩みつつもスキルは取れたようだ。
「……魔法が噂になってるがこの感じで増えていけば問題なさそうだな」
「噂になってますか」
「なってるな。一応先生も気を付けといてくれ」
何をどう気を付けるべきなのか考えているうちに勝田さんの入門コースは無事終了した。増えていけば問題ないとのことだったので多分問題ないのだろう。
つつがなく3万円を売り上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます